そう、それはキミの落し物
今は何も言わずににキミに返すよ

けど、いつかもっと大きな落し物が落ちてきたときには…
それはすべて僕のものになる


天 使 の 欠 片 を 掌 に


ふわり ふわり

太陽の光で眩しい大きな空から何かが降ってきた。
それは、とても柔らかく、光が反射したそれはとても美しかった。

何だと思い、目をよくこらして見てみても光が強すぎてそれが何だかわからない。
そしてそれはゆっくりと降りてきて、自分の掌【てのひら】に優しく乗る。


(………は、ね?)

掌に乗ったそれは、真っ白な羽根だった。鶏や、他の鳥の羽が風にのって飛んできたのだろう、いつもはそう考える筈なのだが、何故かそんな風には感じられなかった。
寧ろ、その羽根に神々しさをも感じた。

暫く、その羽根を見つめていると、ツインテールのあの少女がやって来た。


「棗やん、…何を持っとるん?」

やはり、目についたのは棗の掌に乗っているその羽根。
ツインテールの蜜柑という少女は物珍しそうに目をキラキラと輝かせ、此方に歩み寄ってきた。

「天使の羽根やん!ええなぁ、それどうしたん?」
「おちてきた」

小さいうちは、やはり羽根という綺麗なものに興味がある。そして、すぐに羽根を見ると天使の羽根、と想像してしまうのも子供らしさなのだ。

へぇ、と間抜な顔をして、にへらといかにも欲しそうな顔をしている蜜柑が棗には変に可愛く思えてしまう。そんな彼女を見て、棗の表情には自然に笑みが優しくこぼれてきた。そして、羽根を持っていた手を羽根と一緒に彼女の目の前にやった。彼女は、その手を見て何がなんだか分からずキョトンとしていた。

「欲しいんならやる」

その言葉に蜜柑は目を輝かせ、静かに棗の手から羽根を受け取ると嬉しそうに笑みを見せた。が、それはすぐに消え、蜜柑は繭を寄せた。そして、唇を噛みながらゆっくりと羽根を乗せた手を棗に寄せる。


「…受け取れへんわ」

棗に落ちてきた羽根やん、と最後に付け足すと、気の毒そうに笑みを浮かべた。

蜜柑のその言葉に棗は少しの無言を返したあと、やはり蜜柑のところへ羽根を返した。そんな棗の行動に蜜柑は『いらへんゆうてるのに』というような表情をすると、蜜柑もまた無言で伸びてきた棗の手を押して、戻そうとした。そんなきりのない行動に棗は、静かにふぅと息をついた。



「いつか違うやつが落ちてくるから」

「…ほんまに?」
「ああ、それよりもっと良いのがな」

そう、棗が言うと、蜜柑はニパッと明るい表情を見せ、棗の手にあった羽根を喜んで受け取った。太陽の光で美しく光ったその羽根を蜜柑は嬉しそうに眺めた。
充分に眺めたあと、蜜柑はニコリと柔らかな表情をして、棗の方を向きなおした。

「ありがとう」

眩しかった。
それはもう目も開けられないほどに。
太陽の眩しさとは違う、もっともっと違う眩しさが。
そう、その眩しさは、羽根が落ちてきたときと似ていた。

大切にするね、と言って、またニコリと笑った彼女は元来た道に足を進めた。自分との距離が遠くなっていくつれに自分は無意識に、行かないで、と心の中で叫んでいた。

もっと、その愛しさの横に居たくて、傍に居たくて、前へ進む事に揺れる手を自分の右手で追いかける。もう少しで届くその手を掴もうとすると、彼女はまた振り向いた。


「あ、そういえば」


彼女は戻ってきた、何かを思い出したような顔をして。

また現れたその眩しさに一瞬、目を奪われたが、すぐに無意識に彼女の手をとろうとした自分を思い出し、はっと我に帰る。

彼女の手を掴もうとしたその手をぎゅっと握り締めると静かにポケットにしのばせた。そして、参ったように自分の頭を、くしゃり、とかくと眩しい彼女を見て、いつもの無愛想な一言を漏らす。

「なんだよ」


「これよりもっと良いのってなんなん?」

貰った羽根を指差しながら質問してきた蜜柑に、棗は横目を向いて、あぁね、という風な表情をすると、ふっと静かに笑った。その表情が理解できず、蜜柑は頭の上にハテナマークを浮かべた。



「いつか……落ちてくる」

そう、いつか。
眩しくて堪らないこの空からまた。
今度は欠片じゃなくて、本物が落ちてくる。


―――――というか……………




「……落としてみせる」

どういう意味?というような表情で彼女が自分を見つめてきた。

まだ、人事のように思っている彼女を見ると自然と笑みがこぼれてくる。いつか、気づくであろう彼女の姿を想像すると今度は胸の奥で熱いものがこみあげてきた。

「…あのぉ、何いうてるか分からひんのやけど」
「いつか分かる」
「……なんやそれ」



いつか分かる、その日まで僕は待ち続けよう。

そう、それはキミの落し物
今は何も言わずににキミに返すよ

けど、いつかもっと大きな落し物が落ちてきたときには…
それはすべて僕のものになる


END....

-----------------------------------おまけ(意味のわからなかった人へヒント)------

「これだけ言っておく」

ひらめいたような表情をすると、棗は蜜柑を指さした。
蜜柑は訳もわからずに、なに?、と棗に尋ねた。

「この羽根はお前の落し物だってこと」
「…わけわからへん、のやけど」

「いつか分かる」
「だからなんなん!?分かるって!」

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…意味わかりましたでしょうか?(汗)ごめんなさい、分かり辛くて;
実は、棗くんは天使を蜜柑に例えているんです。それで、まだ自分のものになっていない今は天使蜜柑が落とした羽根は蜜柑に返すんです(本当は蜜柑のものじゃないけど。いや、蜜柑のものっていう訳わからん設定なんです!;)

そして、いつか落ちてくるっていうのは、いつか自分のものになるってことの意味です。まとめると蜜柑が自分のものになっていない今は落し物はキミに返すよ、けど、自分のものになったときはもう返さないよ、という意味で御座います(あ〜!!!わけわかんないよ!!)

というか、棗くん現実的に考えると妄想やばいっすね;蜜柑は天使とか言ってますからね…。いや、でもこれは漫画だからこそ出来ること。マニアックな想像で読んで下さいませ。