「わたしの怖いもの」
※R15 苦手な人はスルー※
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よく疲れないな、と逆に尊敬してしまう。茶金髪の少女は先程から黒髪少年の腕にしがみ付き、鼓膜が破れる程の悲鳴を響かせ続けている。
其の状態が十分程続いているのだ。好い加減慣れてしまって、言葉をかけるのも面倒になってきた。
「いやああ〜〜っ!怖いよじいちゃ〜〜ん!」
何故少年が少女と二人きりで学園の廊下を歩いているのか。
其れは、他の生徒達と大分遅れて少年が教室を出た時のことだ。時間帯も遅く、生徒達は一人も残っていなかった為、廊下は真っ暗だった。だが少年はそんな事等慣れていたので其の侭廊下を進んでいった。
其処でよく知る人物を見つけるのである。先頭を歩いている其の人物は、暗闇の廊下をロボットの様なぎこちない動きで歩いており、明らかに妖しかった。そして泣きながら何かぶつぶつとお経の様なものを呟いている。
其の様子を見て、直ぐに怖がりの少女だと少年は気づいた。そして、少年に気づき悲鳴をあげた少女を黙らせ、今に至るのだ。
「…な、棗…ぜっったいウチを置いてかんといてな……」
「てめぇがぐずぐずしてたらそうなるかもな」
「なんでー!!?ほんまやめてやそれだけはっっ!!」
「その前にお前がしがみついてて動けねえから」
少女はぐすぐすと泣きながら必死に少年にしがみ付いていた。前までならきっと其の手を乱暴に引っぺがしていた筈。今それを離さないのは、きっと惚れた弱み。それにこの状況はある意味美味しいと思った。
少女は数学の補習を受けていたらしい。だからこんな時間に廊下を歩いていたのだ。言葉を交さなくとも、少女の腕に抱えられた数学の教科書とノートを見れば、全てが把握できた。
「く、暗い…怖い……お化けが…っ砂かけ婆があ…!」
「怖がりすぎ。てか砂かけ婆は別に悪い奴じゃねえだろ」
「そうやけど……ってぎゃああああーーー!!!!」
「!?」
と、何気に会話に出てきた砂かけ婆を庇ってやると、少女が行き成り悲鳴を出しだした。微かな物音に反応したのだ。
先程から何度か悲鳴は聞いていて慣れていたが、これがずっと続いちゃきりがない。其れに二人が会ってから大分時間が経っているのにまだ二階にも辿り着いていない。少女が必要以上にしがみ付いてくるのと、場面が変わる事に響く悲鳴が邪魔をするのだ。
「…はあ。」
最初はこの状況を悪くは思っていなかった少年は、疲れてしまったのか一つ息を吐いた。あまりに少女が怖がって煩いもんだから正直うんざりしてしまったのだ。
隣を見れば目を潤ませて自身を見上げてくる愛らしい少女。文字だけならとても良い機会に思えるのだが、実際は違った。然し、少年は刹那ある悪戯を思いつくのだ。
「…違う怖さを教えてやるよ」
急に何時もと違う少年の声が聞こえ、少女は『どういうこと?』と問おうとしたが、其れは少年が肩を押してきた事により掻き消されてしまった。
少年は掴まれていた手を逆に掴み返すと其の侭壁の方に少女を押した。だんっと鈍い音が響き、呆然としている少女と向かい合わせになると、少年は其の侭強引にキスをした。
「…ふ……んんっ!んーーー…っ!むぅ…っ」
息苦しそうに唸り、少女が肩を懸命に叩いてきたが、直ぐに其の腕を封じて舌を絡めた。深く深く角度を変えて其れを続けていると少女が小さな歯で、抵抗する様に唇を噛んできた。
ちくりと痛みが滲んで、微かに酸っぱい味がしたが止めずに進めた。
少女の息がもたなくなった時、少年は静かに唇を離した。解放された途端、げほげほと少女は息を切らすと、少年を睨み付けた。
「…っ阿呆!何するんよ…!?」
恐怖の絶不調にいる少女にとって、少年の其の行動は何時も以上の怒りを呼んだ。然し、少年は悪びれた様子も無く、身長差のある少女を面白そうに見下げている。暗闇で笑う少年が、少女はとても怖かった。如何にかしてこの状況から逃げたい少女は、諦めずに手足をじたばたさせた。然し男と女の力では違いすぎる。少女が今まで以上の力を加えても、少年はびくともしなかった。寧ろ余裕気に力を強めてきた。
すると、黒髪が少女のあごをこそばゆくさせ、少年の唇は少女の透き通った首元を射止めた。ゆっくりと其処に小さな花を咲かせると、少女はびくりとした。
「…やっ、ちょ…なんでこんなこと…!」
「苦手なもの克服してやろうって言ってんだよ」
「はあ!?」
少年はそう言いながら幾つもの花を咲かせると、少女の小さな膨らみを囲んだ。少女がびくりと反応し、小刻みに震えているのが分かる。其れに気づきながらも少年は、其の侭少女の制服の中に手を入れた。其れが少年の作戦であり、少女の為なのだ。まあ少年はそう思っていたのだが。
「もっと怖いものを知れば、幽霊なんて怖くなくなるだろ?」
一旦顔を上げて少女の顔を覗くと、少年はそう言ってにやりと笑った。少女は必死に声を噛み殺しながら少年を睨んでいた。少女がどんなに暴れても少年は行動を止めなかった。ある程度上半身を蝕むと、少年はするりと少女のスカートの中に手を偲ばせ、腿を優しく撫でた。すると少女がまた暴れ出した。
「棗の馬鹿!阿呆!ほんま嫌なんに…っ!離して!誰かぁ…っ」
少女が大きな声を出して助けを呼ぼうとしたので、少年は一旦行動を停止した。そして胸を弄っていた手を少女の口元にもっていくと、其の侭少女の口内に指を入れた。其の途端少女が苦しそうな表情をし、直ぐに声は止んだ。少女が指を噛んでくる。でも其の痛みさえも、少年は愛しくて堪らなかった。
だが、また下半身に集中しようとすると、少女が指を噛む事をしなくなった。どうしたのだろう、そう思い再度少女の顔を覗いてみると、少女は大粒の涙を流して泣いていた。掴んでいた両腕も、かたかたと震えている。少年は静かに問うた。
「……怖いか」
そう問われて、少女は深く何回も頷いた。流れた雫が、下半身を弄っていた腕にぽつりと落ちた。少年は少女の口内に入れた指を抜いてやると、其の侭流れる様に少女の頬を撫でた。少女の涙で頬はびしょびしょになっていた。
それから、濡れた愛らしい唇に優しくキスを落として、少年は償う様に少女の涙を舐め取った。
ことを中断し、少年は其の侭少女の肩を抱いて学園を出た。
先程までの叫び声は綺麗に消え、変わりに静かなすすり泣きだけが廊下中に響いていた。

その後、少女がお化けで騒ぐ事は無くなったのだが、その代わり…
「えっ、蜜柑ちゃんの怖いものって棗君なの?」
後日野之子ちゃんにもらった"プロフィール帳"の『怖いもの』に、少年の名が書かれていた事など、少年はまだ知らない。


END
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中等部の二人。
克服されたはされたけど、結局は怖いものが幽霊から棗に入れ替わっただけ。
なんかよくわかんない作品なんで言うことないです。
ってか最近蜜柑ちゃん泣かせすぎ…?すいません;