「1:強がり」
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移動時間に遅れて、まだ一人教室にいた少女は、少年を見て言葉を失った。
遅れて登校してきた少年の身体には、沢山の傷が残されていたのだ。少女は其の傷を見た瞬間に、少年が何故遅刻をしてきたのかを直ぐに理解した。裏仕事は勿論、ある教師に傷を負わされたのだ。
然し、少年は弱音を一つ言わず、黙って椅子に乱暴に座り込む。
「……理科室、行かへんの…?」
「………」
少年は少女の問いに言葉を返す事なく、ただ無言を返した。
言葉を返している程少年に余裕がないのは少女にだって分かっている。
然し、何だか放っておけなかったのだ。
「あんた、傷大丈夫?」
少年は其の言葉に少し反応し、すぐさま少女を睨みつけてきたが、やはり言葉は返さなかった。
少年の傷は深く、捲くられた腕には血が溢れていた。然し少年は其の傷を手当てしようともせず、"何時もの事"というような顔をしている。
然し少女には、其れが耐えられなかった。
少女は、そっと少年の腕に手を伸ばすと、少年の腕を小さな掌で囲んだ。だが其れは勢い良く少年が腕を振り上げたことにより、離されてしまった。
「…触るな」
少年は黒猫の目で少女を睨みつけながらそれだけ言った。
だが、それでも少女は少年の腕を再度無理矢理にでも囲んだ。
「…っな…!」
「血が出とる」
「…は!?」
「血が出とるんに」
少年がどんなに抵抗しようとも、少女は少年の腕を離さなかった。そして、ポケットからハンカチを取り出すと、少年の腕に巻いてゆく。
少年は何度も手を引こうと力を強めたが、自身の腕に一粒の水が落ちてきた途端に、其れは自然と停止された。少女は泣いていた。悔しそうに。悲しそうに。自分のために、涙を、流していた。
「……お前、何泣いてんだよ」
調子が狂ってしまう。先程まで嫌な教師や仕事のことでむししゃくしゃしていたのだが、思いもしなかった少女の涙を見てしまうと。どうしても、そっちに気がいってしまう。何なんだ、一体。
「…なつ、め…の……が…っ…り…」
「…あ?」
少女が口を震わせながら懸命に声を出した。
其れが聞こえなくて、少年はまた少女に問い返した。
「…なつめ、の………つよ、がり…っ」
ー強がり。少女は泣いていた。自身の顔を見て。自身の傷を見て。自身の運命を幾つか頭にめぐらせて。少女は何故泣くのだろう?何故、自身のために、泣いてくれるのだろう?
ーその涙は、酷く綺麗で。
「……たいしたことねぇんだよ」
でも自身は、やはり強がりだった。
END
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とくに話の内容はどうでもよくて…(ぉ)
まあ強がりってことで…はい(マテ