「結うて願ふ」


久しぶりの二人の時間に少し緊張した。そっと彼の大きな肩に頭をこつんと乗せると、彼が肩に手をやり、引き寄せてくれた。
中等部になって付き合い始めた彼は、何かと忙しくて二人でいられる時間が全く無かった。セントラルタウンに行きたいと誘っても、彼は大切な任務があるため、どれも断られてしまった。今日はそんな彼と約三週間ぶりの二人きりの時間。少しドキドキして、途轍もなく嬉しかった。
彼の肩の暖かな温もりにうっとりしていると、彼が自身の腕を触れた。
「何だよ、これ」
彼はそう呟くと、彼女の腕に結ばれている黄色とオレンジのカラフルな紐の腕輪を指差した。誰か男に貰ったのではないかと彼は眉を吊り上げている。
「ああこれ、ミサンガっていうんよ」
彼女はミサンガをつけた腕を軽く顔の前に持っていくと彼ににっこりと笑いかけた。
「なんでそんなもんつけてんだよ」
「願いごとが叶うんやって」
一昨日アンナちゃんに教えてもらったことを思い返し、彼女はそう言った。
ミサンガを腕や足などに結ぶ際に、願いごとを唱え、外さずに身に付けていると願い事が叶うのだという。その代わり身に付けている最中は、結び直したり、誰かに触られたりしたりしてしまうと効き目がなくなってしまうというのだ。勿論外れたり、切れてしまうのもアウトだ。
「そんなん効く訳ねえだろ」
そうぶっきらぼうに彼は言うと、彼女のミサンガに触れようとした。それに気づき、彼女は素早く腕を引っ込めた。
「触ったら効き目なくなってまうの!」
何だかそう言われると触りたくなってしまう。顔を膨らませて怒る彼女の姿も、もう少し見たいとも思ってしまうのだ。彼が再度ミサンガに手を伸ばすと、彼女は慌てて腕を頭の上にあげた。最初は本当に触るつもりはなかったのだが考えが変わった。もっと感情豊かな彼女の顔が見たい。少し悪戯が過ぎるとは思ったが。
彼は彼女の細い腕を軽々と掴むと、そのままその拍子にそこに触れた。
「…あっ」
触った、と彼女が声を小さく漏らす。その途端、ぶちっと鈍い音が響いた。音が聞こえたかと思うと、直ぐに彼女の唇に柔らかなものが触れた。
優しい接吻は徐々に深いものへと変わり、彼女を火照らせた。そっと唇が離れ、何気なく床に目を落とすと、そこに紐の切れたミサンガが落ちていた。先ほど彼がミサンガに触れようとした拍子でそのまま紐まで切れてしまったのだ。
「ちょ、あんた…っ」
「もう任務に行かなくてもよくなった」
「え…?」
「これからはずっと一緒にいられる」
彼は急にそう言って彼女を抱きしめた。彼女は行き成りのことに動揺したが、直ぐに怒った表情は笑顔へと変わり、彼を力強く抱きしめ返した。切られたミサンガがどうでもよくなってしまう程に。



「ミサンガ切れてもうた…」
夕焼けは徐々に暗くなり、夜更け。ベッドの中で彼女は手のひらの切れたミサンガを見詰めると、口を尖がらせた。彼の嬉しい知らせを思い返せばそんなことどうでも良かった筈なのだが、やはり切れてしまったミサンガを見るとどうも切なくなってしまう。

『願いが叶うと自然と紐が切れるの』
『へえ〜そうなんや』
ふと浮んだのは一昨日アンナちゃんに教えてもらったミサンガの特徴。そんなことを思いながら彼女は沈んだ表情でまた切れたミサンガを見詰めた。
しかし、急に薄く開いていた瞳はぱっちりと大きく開かれ、瞬きを何回も始めた。
ーん?ちょっと待てよ?




『棗と、ずっと一緒にいられますように』




思わずベッドから飛び上がる。
頭がごちゃごちゃしていて、ぼうっとするがもう直ぐで確信できる。
嗚呼、気づくのが遅すぎたんじゃないのか。



『これからはずっと一緒にいられる』





「…あっ、叶っとるやん」
その時ちょうど時計が十二時を指した。


END
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ただミサンガの話が書きたかっただけで何が言いたいとかオチはなんなのかとか聞かれても苦笑いを返すことしか私にはできません…ぇ
ただ蜜柑が叶ってるの気づくの遅いことと、願いが叶ったこと、言いたかっただ…け…。
普通願い叶ってから切れるもんじゃないのとか思うけどそれ口にしちゃだめ。
私は何が書きたいのかさっぱりわからん。それに最近タイトルが思い浮かびません。