まだ歩き始めたばかりの二人の願い。
星となって大きく輝け 想いをのせて――。
新たな幸福
「みんな、一人ニ枚ずつ短尺に願いを書いてねー」
『はぁ〜い』と、鳴海先生の掛け声に負けないくらいの生徒達の声が響きまわる。生徒達は、嬉しそうな声があげながら、もくもくと短尺に願いを書いていく。そう、今日は七夕なのだ。
蛍も、迷いもなく短尺に願いを書いていく。一枚目は『大統領になる』、ニ枚目は『金持ち』と書いていた。それを見た蜜柑は自分とのことが書いてほしかったらしく、涙目で蛍を見つめていた。
生徒全員が楽しそうにしていると思われた。が、一人だけそんな楽しい行事に参加してない生徒がいた。棗だ。机の上に置かれた二枚の短尺に手もつけず、ただ下を俯いていた。それに気づいたのは、蜜柑。不思議そうに棗に近づく。
「書かかへんの?願い事」
「願い事なんてねーよ」
棗は、蜜柑の目も見ずにそう言い捨てると席を外し、教室の戸に向かおうとした。けど、その行為を蜜柑が許す筈もなく、戸を開けようとした棗の手を後ろから掴んで止める。
「いつもと違う」
「は?」
振り返ると、繭を吊り上げてこちらを見上げる蜜柑の顔があった。腕はがっしりと掴まれて、簡単には動かせない。
「なんか元気あらへん」
周りのザワザワとしたはしゃぎ声が馬鹿みたいに聞こえない。彼女に強い瞳に目を奪われてしまったのだ。その理由は、彼女の言うことが図星だったから。
いつもと同じように振舞ったのに、
こいつは気づいた。 何故――…。
だけど、自分は君の優しさを素直に受け入れる事ができないから…。
「…別になんでもねーよ」
ウソヲツイタ
離れていく自分の後を途中まであいつが追ってくるのが見えた。
一生懸命に自分の名を呼んで…。
・
・
七夕は嫌いではない。寧ろ、好きだった。昔までは。
妹と、家族でみんなで…願い事を書いて。好きだったんだ、楽しかったんだ、物凄く幸せで。
けど、今はもう幸せなんて感じられない。いつも傍に居た人達が今は居ないから。
だから、いつも七夕の日が来るとあの日のことを思い出す。
苦い思い出に変わって。愛しい思い出に変わって。辛くなる。会いたくなる。
「…もう、夜か」
一段と輝く数々の星たちを見て、ふぅと息をつく。いつもの木から飛び降りて、自分の寮へと足を進める。寮へ行く途中に大きな竹飾りに遭遇した。先程、生徒達が書いていた短尺も飾ってある。何気なく、ひとつの短尺に目を向けた。
それは、自分がよく知る人物の名前。
「…みか、ん」
その人物の短尺に書かれた内容に棗は言葉を失った。
『なつめに、新しい幸せがきますように 佐倉 蜜柑』
・
・
「蜜柑」
「ん?何、蛍」
「…あれ、棗のじゃない?」
「……え…?」
指さされた短尺には『棗』という文字が。
確か、棗は書かなかったはずなのに………。
『この馬鹿みたいな幸せが続きますように 日向 棗』
「…ばか、みたいな……?」
「おい」
「な、なつめ…!これ……」
「てめぇが勝手に押し付けた幸せ、どうしてくれんだ」
笑いがこみ上げてくる。
面白くて、嬉しくて、少し照れながら言う棗に愛しさまでもを感じてしまう。
まだ歩き始めたばかりの二人の願い。
星となって大きく輝け 想いをのせて――。
END
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七夕だあ!!!とか思って大急ぎで作ったもんなんでかなり意味がわかりません。ヤバすぎて言うこともないのでここまで。お許し下さいませ!!(逃)