(棗くんと蜜柑ちゃん)


何時もと何ら変わらない。ただ、変わるとしたら何時もの二人の関係だろうか。
「阿呆」と言えば、「馬鹿」と帰ってくる。そんな二人は何時も喧嘩ばかりで、其の光景は何時もと何ら変わりは無い。然し、そんな品の無い言葉を繰り返す事で、今日と云う日が成立するのだ。
「何でウチがぶたれなあかんねんっっ!!!」
ウチは悪くないんに、と泣きながら続ける少女は、今正に目の前に居る無愛想な少年に殴られたらしい。其れは、回って来たプリントを回そうとしない少年に少女が軽く注意をし、そして殴られ、今に至る。
殴った意味は特に無い。まあ、所謂好きな子程苛めたくなると云うあれだろうか。
「馬鹿!阿呆!おたんこナス!嫌味狐ぇぇーーー!!!!」
どかどか暴言を飛び散らす少女に対して少年は何だか楽しそう。何時もなら、極悪面をして直様少女の髪を燃やしている筈だが。

だが今日は違った…。
そう、今日は。


「…っあんた!何笑ってんねん!ウチは本気で怒ってるんよ!?」
笑っている少年に気づいたのか、少女は直様怒りを少年に向ける。然し、少年はそんな少女に言葉を返さずに、ただただ面白そうにニヤついているだけ。
そんな少年に好い加減怒りが頂点に足して、少女は一番の大きな声を出す為に沢山の空気を口の中に吸い込んだ。


「……っっ棗なんてだいっっっきらい!!!!」
言い終わり、其の場を去ろうと背を向けた刹那、ぐんっと後ろに体重が掛かり、思わず元の場所に戻されてしまった。瞬間的に瞑っていた瞳をそっと開けると、少女の腕を引っ張ったと思われる少年の姿が直目の前にあって。
かなり近い其の場所から反射的に後ろに引き下がろうとしたが、急に少年が耳元に顔を寄せてきたもんだから思わず固まってしまった。
混乱する感情。少年は、何かを企んでいるかの様に未だに笑っていた。
そして、耳元で一言。

「俺も大嫌い、お前の事。」
『え?』と言葉を返す暇も無く、唇で声を奪われた。優しい優しい長い口付け。訳も分からない侭奪われてしまったけれど、其の時翌々考えてみれば今日はエイプリルフール『嘘を吐いて良い日』で。
してやられた気分で悔しかったが、丁度良いかと少女は思った。

ーこんな日が無ければお互い素直にはなれないのだから。


「回りくどいんじゃ…阿呆……」
まあ、嘘から始まる恋も悪くは無いか、と。




dis like?

(きっと、嘘からはじまる恋も)




エイプリルフールの特別小説(すいません短くて)
あれ!?今思ったら二人どこにいんの!?生徒はどうした!?
…二人っきりって事にして下さい。
別に内容は特別でもなんでもないんですけどね。
特別小説といってもフリーではないのであしからず。。