(棗くんと蜜柑ちゃん)


放課後の教室に二人は居た。下校になっても目を覚まさない少女を何時も少年は何だかんだ言って何も言わずに起きるまで待ってくれている。暇だっただけだ、と出鱈目【でたらめ】な理由を付けては。
そんな優しさがあるから、少女は何時も安心して眠りにつけるのだ。
「…ん……」
ほろほろと眠気が覚めてきて、うっすらと閉じていた瞳を開ける。ゆっくりとへばり付いていた机から身体を起こし、ごしごしと目を擦りながら横を見た。やはり、其処には何時もの少年の横顔。
「…起きたか」
赤い瞳と目が合ったかと思うと、少年は直ぐに鞄を背負い、帰る支度をし始めた。ぼやけた目で時計を見やれば、もう下校時間はとっくに過ぎていて。
しかし、その時間帯と、目を覚ました自身の隣に少年が居る事は何時もの事で、蜜柑は特に変わった反応はしなかった。
そして、今日も何時もの言葉を少年に問う。
「待っててくれたん?」
「…暇だっただけだ」
そして、また今日も同じ言葉が返ってくる。何時もと決まった台詞を口にする少年が妙に可笑しくて。それでも事実、自身を待ってくれていたのだと思うと、嬉しくて口元が緩んでしまって仕方がなかった。全ては自身と同じくらい意地っ張りな少年のせい。少年がそう言っても、少女は笑顔で何時もの言葉をかける。

「…ありがとな」
そう呟くと、何時も少年は照れたように顔を背ける。
そして、何時も次の場面になると、どちらともなく手を繋いでいた。


「だいすき」

最後には、そう言って小さく頬にキスをする。
きっと同じ事が何回も何回も。
明日も明後日も明々後日も繰り返し。

だけど、それが幸せだからそれでいい。



何時も無神経な少年が、唯一優しさを見せる時がある。
それは、放課後。
極上の眠りの中で静かにそれは降りて来る。

少し不器用な、暖かな優しさが今日もまた降りて来る―。




優しさが降りて来る

(それが幸せだからそれでいい)




進むにつれ何が言いたいんだが分からなくなってきた。