こんな感情も、この戸惑う声音も
ぜんぶぜんぶ雨のせい
「雨のせいにして」
「雨なんて珍しいなあ」
ー最近、ずっと晴れだったし…。
「…っちゅーか、傘もってへん……」
(…あ、なつめや)
「なあ、一緒に入れて?」
「は。デブが入ったら狭くなんだろ」
「…っな!そんなデブやないもんウチ!!」
ー暫し言い合いはあったが、
最終的に入れてもらうことに。
(……なんか、緊張するな、何でやろ…)
棗が隣に居るだけなんに。
何時もより近い、それだけなんに。
ーあ、ウチ顔真っ赤
(…っっ!ちゅーかこれ相合傘やん…!!!!)
いやああ〜!!
なんかごっつ恥ずかしなってきたわ!!!
し、自然にするんよ蜜柑!!
け、けどなんか落ちつかへん……!!
ごつん
「……っおよ?」
「…傘、いらねぇ。お前使え」
「えっ、なつめっ。で、でも……」
「いいから使え。持ってるのめんどくなった」
「…え…っ、ちょ…!」
ーこれは、優しい、ってゆうんかな…。
(ウチがパニくってたから気ぃつこぉてくれたとか……)
「…なあ、ウチ持つから、入らへん?」
「…いい」
なんかウチ変やなあ…。
棗の顔とか、棗の湿った黒髪だとか、
ろくに見てまうと、ドキドキする……。
顔が真っ赤になる…。
(…あ〜あ。棗、びしょびしょや……)
「なつめ!ちょぉ止まり!!」
前を歩く濡れた少年を強引にストップさせて、
カバンから取り出したタオルで、少年の頭の雫を強引に拭き取った。
わしゃわしゃと乱暴に動かすタオルの隙間から赤い瞳が見えた。
「…なつめ。あんた意地っ張り…」
「……それはお前だろ」
それは両者、同じこと。
その赤い瞳も、その言葉も、行動も髪も全部ドキドキした。
必要以上に声を戸惑わせて、頬を紅にさせた。
「……雨のせいなんやから…」
疑問気な声音が返ってきたがそのまま無視をした。
紅に染まる頬も
優しく見える彼の姿も
こんな感情も
この戸惑う声音も
ぜんぶぜんぶ雨のせい
珍しく降った、長く冷たい雨のせい
END
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心の異変を無理矢理なにかのせいにしてしまう不安定な初めての恋の症状。
『ウチが棗にドキドキしてしまうんは、全部全部雨のせいや』
そんな戸惑う蜜柑が好き。