「太陽を見る」


「…なあ、ウチ棗んこと好き………」
急に言われたその言葉は、
身震いがする程、衝撃的な言葉で。
涙が出る程嬉しかった。
勿論、自身も夢見てしまう程、彼女の事が好きだった。
寧ろ、嫌う理由等どこにもなかった。
それ程、愛しくて。

けれど。


『その石、佐倉にあげる』
『いつか、もらって。』
『うん!じゃあ交換な!』


―ルカ

その時、目にした親友の表情は、
とても嬉しそうで。
時々、それが離れなくて夢にまで出てきた。
人一倍、悩んだ。

だから…。



「……お前の事は、恋愛対象には見れない…」
「…………ごめん。」
ごめん ごめん
俺だって、君をこの手に抱きたかったけれど。
「……そっか。ええよ、そんな顔せえへんで」
立ち去る後姿に小さな雫が見えて。
悲しくて、切なくて、思わず揺れるその手に手を伸ばした。

けど。
それは許されない事。
伸ばした行き場のない手を固く握り締める事しか出来なかった。


自身のものにできなくとも、
君の笑顔をただ影で見る事が出来るなら何もいらない。
ーそう、なにも。



「…佐倉に、言われたんだって?」
ー好き、だって。
親友が複雑そうな表情で付け足した。
「……知ってたのか」
「知ってるよ…。噂になってるしね」
あの場面が。
彼女のあの寂しげな表情がまだ消えなかった。
親友の顔を見ると、余計に如何し様もない罪悪感に襲われる。
その時は、ただこの場から逃げたいという気持ちしかなくて。

「……なつめ、無理してるでしょ?」
去ろうとする後姿にそう問われ、顔を向けた。
その時、自身がどんな表情をしてるかなんて考えてもいなかった。
「何が言いたい」
「本当は、自分も佐倉が好きなのに俺に同情してる」
って言いたいんだよ。
と、付け足す親友の表情は怒っているようだった。

『佐倉が好きなのに』
親友は全てお見通しだった。


「…別に同情してる訳じゃないし、水玉が好きな訳でもない」
そう言った途端、風が吹いてきた。
親友が、思い切り自身の両肩を掴んできたのだ。
何故、そこまでする?
「…うそ。俺が分かってないとでも思ったの?」
「……………………」
そうさ。
俺だって、あいつの事が好きだよ。
如何し様もないくらいにあいつの事が好きな事ぐらい分かってる。
そして、また親友もあいつが好きって事くらいも分かってる。
だから、どうしていいか分からない。

言える事とすれば、
流架とあいつが幸せになってくれればそれで……

「―棗、前に言ったよね…?
俺さえ楽しければ、俺さえ幸せならそれでいい、って」

『お前さえ、楽しけりゃそれでいい…』

「…っ棗は優しすぎるんだよ!自分は、たくさん辛い思いしてるのに…!」


人が好んで行う行事や、
人が面白がって参加する遊びは、直接俺には関係なかった。
笑って、遊んで。
そんな平和な日常が俺にはなかったから。
ただ、一日一日を裏の依頼を嫌々ながらこなすだけ。
笑う事なんて一切なかった。
だから、何時も自分を犠牲にしていた。

「…俺だって同じなんだよ…っ。
俺だって、棗が幸せならそれでいいんだ……」
棗に少しでも幸せになってもらいたくて。
「………ルカ…」

何故、君は泣くの?
何故、自身の為にその綺麗な涙を落とすの?

「……佐倉は、棗が好きなんだよ…」
「…………棗じゃないと、駄目なんだよ…」

『…なあ、ウチ棗んこと………』


ー俺も好きだ。
如何し様もないくらいに好きで、好きで。

この気持ちは何だろう。
全身から上へ上へ溢れてくる不思議な感情。
感じた事もない感覚。
それは夢に見た幸せの映像のようで。


「…ねえ、行ってあげて……佐倉のところに。」
初めて、自身が幸せ者だと思った。
それが嬉しかった。


「……ありがとう………有難う、流架……」

ーごめん、なんて言わない。
言ってはいけない。





「みかん」
振り向いた表情は少しよそよそしくて。
自身の次の言葉を聞いたら彼女はどんな顔をするだろう。
あの太陽みたいな表情を取り戻してくれるのだろうか。
また見れるのだろうか。

待たせてごめん。




「……俺も、お前が…」
今度の自分が待ち遠しい。
この瞬間からの自分が待ち遠しい。
もう影からじゃない。
もう後ろからじゃない。
今度の僕は、君の太陽を近くで見る事が出来るのだから。


今日も太陽は大きく笑ったー。


END
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あんまり三角関係は書いた事がなかったので書いてみました。