毒で眠りに落ちてしまった眠り姫。
そんな姫を助けに来たのは勇気ある王子さま。

王子さまがお姫さまにそっと口付けすると…

あら不思議
お姫さまは奇跡的に目覚めたのです。



ひ よ こ と 王 子 様

- - 後






ガンッ!!!

棗によって蹴られたロッカーは大きくへこみ、戸がガタンと落ちた。
そして、自分も乱暴に地面に座り込む。
その横にはそんな棗に怖がって壁にしがみついている、とりつかれた少女。

「お、お母さん…どうしてもうたん…?ウチ、怖い…。」
「……………………。」



『それはあなたしだいだけど…。』
『あなた自身で気づかなければ意味がないもの。』


ガン!!

「ひっ…」

壊れたロッカーをまた蹴る。
そして、俺の横にいるブスがまた怖がる。






「…なぁ。」
「……何、お母さん…。」
「……俺しだいって…何。」
「……?」

冷めた横目で見てくるお母さんが怖かった。
態度は同じだけれど、気持ちは全然違った。

「俺自身が気づかなきゃ意味がないって…何?」
「……あの…よくわから…」

「……何怖がってんだテメェ…。」
「…っ、あ…ごめんなさ…い…っ!」

ぐいっ

この手で掴んで、ひっぱる髪は、いつもと同じだけれど…
外見も全く同じだけれど…

その表情…
中身全部が……






「―――ちげぇんだよ…。」

怖がるんじゃねぇよ
怯えるんじゃねぇよ

テメェはいつもそんな顔はしねぇだろ




「おい……
さっさと戻れよ」

元のうっせぇテメェはどこにいったんだよ


「お…かあ……さ、ん…?」
「泣くんじゃねぇよ…さっさと戻れっつってんだ」
「……ぅ…っ…」

泣くんじぇねぇよ…
俺は泣いてるブスは好きじゃねぇ。




「――元のお前に戻れって言ってんだよ!
元のテメェは、そんな少しくらいで泣くわけねぇんだよ!」

「……ひっ…ふ、ぇ…ぅっ…」


俺は…………


笑ってるブスの方が好きだ――…。




汗ばんだ背中を一気に地面に押し付けたらひんやり冷たい風が吹いてきた。
なぜか目から流れてくる水を彼女に見せないようにと両手で隠す。
泣くなよ、と言っても泣き止まない彼女に失望した自分がそこにいた。
戻れよ、と言っても簡単には戻れない現実を重く理解した自分がそこにいた。

諦める…?
さぁ……どうだろう…、まだ解らない…。
何もかも解らなくなった…というのが本音だから。
















「は〜い、棗くんはちゅーするに100円!w」
「ええ…僕はやっぱ…き、キスなんてしてほしくないから…しない方に100円。」
「俺はもちろんしない方に100円だけど……もしかしてしちゃうかなぁ!?ll」
「あっれ〜!?してほしくないってことは飛田くん蜜柑ちゃんのこと好きだったりしてぇ〜!w」
「えっ!?マジで!?委員長、佐倉のこと好きになっちゃったりしちゃった訳!!!??」
「…えっ…//ち、違うよ!だ、だって…えっと、ま、まだ小学生だから!」
「ほんとぉに〜〜??w」
「メイビー!!??」
「え…あ、うん…め、メイビー…。」
「よし!!」
「え…っていうか、メイビーって何…?」
「えっ、プライド知らないのかよ!?きむたくが…〜〜〜」

ナル先生と、委員長と、流架はというと、教室で輪のように座り込み、
棗が蜜柑にキスをするのか、しないのかを100円をかけて楽しんでいた。
そしてプライドの話がちらほら…。まぁ、流架は楽しんではいないようだが…。

そんなおふざけオーラがただよっている3人に後ろから天才少女がバカン。
3人は大きなたんこぶをつけて地面に見事に倒れこんだ。

「あんたら、ふざけてんじゃないわよ。」

済ました顔でそう言う蛍に3人はおとなしく声を揃えて『すみません』と言った。
蛍はそれを聞きおえ、ふーっと息をつき、男3人の輪にとけこむように座りこむと…


「私はキスする方に100円ね。」

「「「参加するのかよ!!!!!????」」」

よく解らない不思議少女のボケと3人で精一杯頑張った
生まれて初めてのさまぁ○ず三村風のつっこみが部屋中に響きまわった。
3分の沈黙の後、4人の中で約4分間のダメだし会が行われたという。





「あ、俺ちょっとトイレ。」

流架がそう言うと残りの3人は『は〜い』と軽く言った。
戸を開け、閉め終わると流架は、はぁ〜とひとつ長い溜息をついた。
用はトイレではなかった。実はというと、先程から棗と蜜柑がどうなったのか
気になっていたのだ。
本当は、自分が蜜柑の母役になりたかったし、蜜柑に甘えられたかった。
それに、棗とは親友でもあり、ある意味ライバルでもあるのだ。

教室に残っている3人にバレないように忍び足で2人のいる保健室へと向かった。
だが、奥からこちらへ向かってくるひとつの足音でその足は止まった。
遠くなので、誰なのかは解らない、流架は軽く真横の壁の影に隠れることにした。

足音はどんどん大きくなってきた。
そして………


(――さ…くら…?)

蜜柑だ。下を俯いてゆっくり歩いてくる少女の姿はいつもと違った。
気になった流架は戸惑いながらも蜜柑の前に現れた、が…。

「…さ、佐倉!」
「っ!!きゃああああ!!!!!!」
「…えっ!??llll」
「こ、怖い!誰やねんあんたぁあー!!!」

(あ…、そうだ…今の佐倉の心はヒナなんだ…。)

「…俺は怪しい奴じゃないよ…っ!君のお母さんと一緒に居ただろ…?」

ちょっとショックな流架だけれど、それでも必死に蜜柑を説得しようとした。
だが、流架は今にも泣きそうで頼りない。

「……そうやったっけ…?」
「……………うん…。」

やっぱりショックな流架でした。




「………なつ、お母さんは…?」
「そんなんあとででええやんか!先に名前教えてくれへん?」

元気よく言っているように見えるが、それが彼女の強がりだと
流架には少しわかっていた、だって目がはれてる…泣いたんだ…。

「え?あ……流架…。」
「流架?ええ名前やなぁ!んじゃ流架ぴょんって呼ぶわ!」
「ぴょ、ぴょん…?」
「うん!ぴょん!」

操られてるにも関わらず、いつもと同じあだ名をつけてくる蜜柑に
流架は思わず吹き出してしまった。
いつものようにきょとんとした表情、やはり変わっていない。
でも、そう思っているのは流架だけだった。











それから、そこに座って少し2人で話すことにした。
蜜柑も『ウチも話したいこといっぱいある』と言って賛成してくれた。

「…あのさ、お母さんは佐倉に何か言ってた?」

棗の話になると、何故か少し俯く蜜柑に気づきながらも流架は答えを待っていた。
少しの間のあと、蜜柑がゆっくり口を開いた。

「……あんな、お母さん…元のウチと今のウチはちゃうとか…戻れとか…言うねん。」

そのまま彼女は最後に『元のウチって何?』と寂しそうに付け足した。
流架はその言葉を聞くと、繭をひねらせ、下唇を軽く噛んだ。
そして、また少しの間をあけると、流架は口を開いた。
けど、『それは…』まで言うと蜜柑が喋りだした。



「怖い…っ!怖いねんけど…でもな!でも…
 なんか辛そうやねん!!なんかごっつ元気なくなってしもうて…っ

でも、ウチ自分のことばっか考えておってお母さんの気持ち…理解できへんかった…!」


――――――――……………


そのまま泣き崩れてしまった彼女を見つつ、
流架は何を思うのか呆れたように微笑むと、ふぅと息をついた。
そして、こんなことを言う。

「――――…佐倉は変わってないと思うよ。」
「……え…?」

顔をあげた蜜柑の涙を指で軽くふいてやると、流架は微笑みながら
蜜柑の頭をなで始めた。
蜜柑は何がなんだか解らずに流架を見つめていた。

変わったところもあると思うけど、
でも……相手を何倍も想う気持ちは全く変わっていないんだ。

「お母さんにこうすれば…
 きっとお母さん元気になってくれるよ…。」

「………ほんま…?」
「…うん。お母さん寂しがり屋だから。」

『お母さんのところ行ってあげな』と付け足すと、流架はゆっくり立ち上がり、
蜜柑の手をひいて、立ち上がらせた。


本当は行かせたくなかった
本当は無理にでも自分のところに居てほしかった

にこりと笑って棗のところへ向かう佐倉の腕を
ひいて、抱きしめて………そうしたかった


でも、今の佐倉には
棗が必要だから――――

そして、棗も
佐倉が必要だから――――…。








「―――――っ佐倉!!

 お母さんは…っ棗は……君のお母さんじゃないよ!!」


「―――――――――…え……?」


こう言うべきなんだ
こうするしかないんだ

君のためにも
棗のためにも

すべてのためにも―――……



「―――棗は………………

 お母さんじゃなくて………君の王子様だから……!!」



天使のように軽く微笑んだ彼女は去っていった。
その姿を見送ると俺は長い息をついてそこに寝転んだ―…。


続。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
はい、流架ぴょん大活躍。
なんかあまりコメントすることないです…。
よく出来たわけでもないし、よく出来なかったわけでもないし…。
微妙なせんです、まだまだ続きます、お楽しみを。