何時か、何時か。
また、此処で会いましょう…。









幾千の祈り W




不意に能を埋めたのは、大好きな妹とよく行った秘密の場所だった。遊びの帰り、妹と偶然見つけた其の場所は一面花畑で美しい場所だった。周りを見渡せば黄色や桃色の花弁が舞っていた、蝶だって気持ち良さそうに羽を広げていた。
本当に美しくて天国の様な場所。

『はい、お兄ちゃん』

そう言って、ふんわりと頭の上に乗せてくれるのは妹の手作りの花冠。
毎日この場所に来れば、毎日作って被せてくれた。
ふんわりと笑って、自身を癒してくれた。
ずっと一緒に居たい。ずっと此処に連れて行ってあげたい。
そう思った。








『奈々っ!!?』

買い物の帰り、階段を下りていると隣に居た妹の姿が一瞬だけ消えた。途端、瞳に映ったのは細い悲鳴をあげて階段から落下していく妹の姿。急な事に血の気が引いて、咄嗟に落ちて行く姿に手を伸ばしたが間に合わなかった。

何が起きたのか分からなくて、兎に角身体中が震え上がって、無我夢中に落下した妹に駆け寄った。妹にあまり怪我は無かった。然し、苦しそうに足を抑えている。如何して。何が起きて妹は。
何気無く後ろを振り返り、先程居た場所に目を向ければ、其処にはニヤニヤと笑っている男が突っ立って此方を見下げていた。
其の映像で何もかも分かった。其の男が妹を突き飛ばしたと。
そして、男は其の場からこう言う。


『悪魔の兄妹め。さっさとこの町から出て行け』



一気に頭に血が上ったのが分かった。

『…っってめぇ!!!!』

怒りが頂点に足して、其の侭階段を登りあげて男を捕まえようとした。然し、其れは後ろから両手で抑えつけてきた妹により止められた。吃驚して後ろを振り返って見た妹の表情は優しい笑み、然し其れは我慢している様にも見えた。

『…やめてお兄ちゃん。奈々は大丈夫だから…』
『けど…っっ』
『いいから。暴力はいけないんだよ…?』

妹は眩しすぎた。
そして、自身よりも強かった。


あの衝撃で妹の足は動かなくなってしまった。打ち所が悪かったのだ。自身は医師から其れを聞いて絶句したが、妹は泣かずにただ自身に微笑んでいた。
もう杖を使ってでしか歩く事が出来ない。何時も二人で走って向かったあの秘密の場所に行く事が出来なくなってしまった。

『お兄ちゃん、奈々は全然悲しくないよ』
『……なな…』

『だって、お兄ちゃんがお花を見せてくれるんだもん』


何処まで眩しいのか、そう思った。
誰よりも悲しくて、苦しいのはお前なのに。
けど、きっと、表は強く見せていても、裏はとても不安で悲しいのだろう。
時々目を腫らせて部屋から出てくる妹を見ると嫌でも分かってしまう。
其の度に優しく抱きしめた。妹は其の時だけ涙を見せる。



この町の住民から被害を受けるのはこれが初めてでは無い。過去に家中に暴言の書かれた紙を貼られた事もあったし、バケツに入った水を頭からかけられた事もあった。
彼らは自身にある不思議な力に恐れていたのだ。然し、其の力は誰もが持っているものだと思っていた幼い自身は、何故住民が自身等に冷たくするのか、何故被害を加えるのか分からなかった。

『この力がいけないからあいつ等は俺達を嫌うのか?』

不安になると、時々妹に弱音をぶつけた。
然し、妹はにっこりと優しく笑いかけてこう言う。

『いけなくなんかないよ。奈々にもお兄ちゃんみたいな力あるもん』

今思えば、そう言って奈々が自分の力と云うものを見せてくれた事は無かった。
正しく言えば、一度も見た事が無い。
そう、妹には最初から自身みたいな力は存在しなかった。
今更気づく自身が憎らしかった。
奈々は兄である自身にだけその様な力があると知っていて、そして気遣って嘘を吐いていたのだ。奈々は何も悪く無かった。無関係だった。

なのに、なのに……






『こいつぁ悪魔だ!俺達殺されちまうぜ!』
『火が出せるなんざ人間じゃねえ!』

何故、火を出しちゃいけない?
殺す?誰が…?

『お前の妹だってどんな力持ってるか分かりゃしねえよっ』

違う!妹は関係ない!
俺達は何もしない!


『さっさと殺っちまえ!!』


何で。
どうして。

やめろ。
ふざけるな。


――ヤメロ…!!!











「…大丈夫!?棗!」

はっと目を大きく開けて映ったのは心配そうに自身を見詰める流架の姿だった。汗だくになった身体で周りを見渡せば此処は保健室、そして自身はベッドに横たわっている。
何が起こったのだろうか。何時の間に。
あいつは現代に戻ってこれたのだろうか?

「…っみずた……」
「急に棗、倒れたんだよ」

ーえ…?

倒れた?何故、如何して。頭が混乱して勢い良くベッドから飛び上がろうとすると、急に頭に激痛が走った。あまりの痛さに頭を両手で抑える。
割れる様に痛い。

「大丈夫…!?棗あまり無理しないで」

親友が『休んでて』と付け足すと、少年は目つきを変えた。そして、頭痛に堪え、無理矢理ベッドから身体を起こそうとする。
然し、途端にまた強烈な激痛が頭に走り、少年は鈍い悲鳴をあげてベッドに勢い良く腰を落とし逆戻りした。

「…棗!?大丈夫!?痛いの!?」
「なつめ…っっ〜〜〜〜!!」
「……つめ………っ」

意識が遠退いていく。心配そうに自身を呼び掛ける親友の声は途切れ途切れと消えて行き、激痛の後は急激な眠気が自身を襲い、其の侭親友の顔が見えなくなった。
ふんわりとした暖かい空気の中に今までの記憶が飛び交った。生まれた時の事、妹が生まれた事、二人ぼっちになってしまった事、秘密の場所を見つけた事、妹が歩けなくなったしまった事、そして………


ーーー少女ニ出会ったコト。

















タイムトリッパーの少年と、殿は今だに消えてしまった少女を救おうと気を集中させていた。一方、生徒達や教師は黙ってスクリーンに映し出されている映像を見詰めている。
すると、クールな少女がたった今作りあがったばかりの発明品らしき物を皆の見える場所に置いた。置かれた其れに生徒達や教師の目は釘付けだ。
其の発明品は黒のカッコ良いデザインの四角い形の物に、イヤホンの様な物と、マイクが付いている。
気になったのか、直様イヤホンを耳にセットしたクールな少女に鳴海が質問した。

「…今井さん、それ何?」

クールな少女は何を思うのか、せかせかとタイムトリッパーの少年が被っているヘルメットと其れを繋げ合わせると、こう言った。

「これで蜜柑と会話が出来るのよ」

生徒と教師達の驚き声等聞かぬ侭、クールな少女はさっさとスイッチを入れてマイクを通し始めた。途端にざわつく教室。然し、電波が悪い為か、蛍はマイクで声を通しながら顔を顰めた。


「みかん…みかん……聞こえる……?」

そうクールな少女が映像を見ながらマイクで少女に呼びかけると、放心状態だった映像の中の少女が微かに反応した。如何やら少女の声が其方に届いたらしい。
火の中で途端に首を左右に回し、親友の姿を探している少女を確認すると、クールな少女はまたマイクを通した。

「其処にあたしは居ないわ。今、機械を通してあんたに話し掛けているの。
何があったの?話してちょうだい」

すると、映像の中の少女は我慢し続けたであろう大粒の涙をぼろぼろと一気に流した。其の侭声をあげて泣き始めた少女の泣き声をクールな少女と生徒達は黙って聞いていた。


『…っ人が死んでく……っっ奈々ちゃんも下敷き…っに……
ウチ…どうしたら、ええか…っ全くわから、へん……っっ』
「…よく分からないわ。詳しく話して」








「…ウチ…っっ棗の過去に来てもうたみたいや…っ!」

今正に教室に戻ってきたある少年は言葉を失った。


NEXT
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たいっっへん遅くなってしまい申し訳御座いませんでした!!!m(_ _;)m
さて、教室に戻ってきたある少年とは誰のことなのか。
次々と過去が明らかになっていきます。短くてすいません。
今回はまず棗の過去に振り返ってみました。色々あるんです彼なりに。
今度は謎だった流架ぴょんの過去にもせまっていきたいと…。
何故、棗と奈々の傍に流架の存在はなかったのか。それを書いていきたいと。
まあ、ただ流架の登場に悩んで無理矢理考えたものなんだが。
次の更新いつになるか分かりませんがどうか宜しくお願い致します(汗