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― 悪 戯 ―







  現在B組では、何やら『さかさま言葉』というようなものが流行っているようで。
  教室を見渡せば、殆どの生徒がそれを使って遊んでいた。
   
  「(きすいだるたほ)を逆さで言うて?」
  「………ほたる…だい、すき」
  「当たり!!蛍大好き〜〜!」
 
 
  例を言えば、名のとおりこのような遊びである。
   
  にんまりと嬉しそうな笑みを見せて『大好き』を連発しながら無口な親友に抱きつく元気いっぱいの少女。無口な少女は、何だかうっとおしく思っているような、気に喰わないような表情だが。
 
 
 
  『さかさま言葉』は、日が過ぎる度に変化をしていった。
   
  ーついには、対戦ゲームにもなったのだ。
 
 
 
  「(いさんてゃちっめいさんてはチウ)!!」
  「う、ウチは……て、てて…ん……っっえ〜と」
  「ブッブー!時間切れ!ウチの勝ち〜〜〜!!」
 
 
  それは、両者一つずつさかさま言葉の問題を出題し、相手から出題されたさかさま言葉を十秒以内に答える、というようなものだった。そして、十秒以内に答えられた者は先へ進める。何とも子供らしい遊びである。
 
  ーそして、何故か蜜柑はさかさま言葉に強かった。
 
  どんな問題でも簡単に十秒以内で答えられるのが蜜柑。あんなに馬鹿なのに…と目を疑う生徒も少なくは無いだろう。
 
  蜜柑は対戦してきたものに全勝し、あと一人と戦えばB組制覇というところまで来ていた。
 そんな隠れた才能に生徒は皆悔しく思い、蜜柑が負ける事を望んでいた。
 
 
 
  そして、少女はある少年の所へ向かう。
   
  ーその少年とは、黒髪に赤いピアスの日向棗。
   
  この少年に勝てば、B組制覇。だが、棗は決して強い訳ではない。正しく言うと強いのかも弱いのかも生徒全員知らないのだ。何故なら、棗はそんな遊びを馬鹿らしく思っており、全くこの対戦ゲームに参加していなかったからだ。
 
  参加していないから…そんなの関係ない。
  とにかくここで彼を倒せばB組を制覇できるのだ。
 
  B組の中のみ、という事はあえて触れないで。
 
 
 
  「棗!最後の対戦や!ウチと勝負しぃ!!」
 
 
  大きく目を見開いて真っ直ぐ真剣に少年を見詰める。
 少年はというと、雑誌を顔面に被せながら目だけちらりと此方を馬鹿にしたような目で見ているだけだ。
 
  一つ長い息をついて、暫くして顔面の雑誌を机に置いた。そして、其処に座りながら目の前に突っ立っている少女を見詰める。真剣に見詰めてくれたのは有り難いが、どことなくやはりその目は自身を馬鹿にしているように見えた。
 
 
  「いいぜ。その代わり、俺から出題させろ」
 
 
  にやり、と何かを企んでいる表情を見せながら言う少年。けれど、さかさま言葉に大きな自信を抱いてる少女は、そんな事は全く気にせず、ただにんまりと笑顔を浮かべていた。
   
  少しの間の後、ようやく少年の唇が動いた。
 
 
 
  「(いさだくていだをしたわ)の逆さま」
 
  と、出題。
 
  けど、少年が出題したそのさかさま言葉が、蜜柑の勝利への道を激しく揺らす事になる。
 
 
  「…ええと………わ、た……し………を……
 
 
 
  ―――――――――――わたしをだいてください!」
 
 
  蜜柑が自信満々に答えたそれは、まさしく……
 
 
  「……ん?だい、て…くださ…い……?」
 
 
  頭上にハテナマークを浮かべている蜜柑を目の前に、棗の不気味な笑みが露になる。
 
  まだ、小学生だから意味は知らない。けれど、蛍や、心読み君は兎も角、その他の少数の余計な知識を持った生徒ならばきっと顔を真っ赤にするだろう。
 
 
 
  「…じゃあ、今夜。俺の部屋来いよな」
 
 
  そう言って、棗は授業が始まるにも関わらず、さらりと教室を出て行った。
 
  ーな、なにこれ……?
 
 
  訳も分からず、そこで突っ立っている蜜柑。
  そして、同じく訳も分からずそこで呆然としている生徒多数。
 
  けど、何だか蜜柑が勝った気は皆しなくて。
 
 
  「何だかよく分からないけど……
   
           棗さんが佐倉に勝ったぞ!!」
 
 
  急に一人の男子生徒が言い出して、蜜柑に負けて欲しいと願っていた複数の殆ど男子生徒達が嬉しさの声を上げた。
 
  そんな雑音も耳に入らず、蜜柑はまだ、ただそこで突っ立っていた。
 
 
  (……へ…?ウチ…負けたん……?え……どうして……?)
 
 
  そんな光景を見て、蛍と心読み君は隠れて失笑。
  多分『ドンマイ』等と思っているのであろう。
 
 
 
  その夜、蜜柑が棗の部屋に訪れたかはまた別の話…。


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なつみかん同盟様に何時もお世話になっているので送らせて頂いた作品…。
御礼のつもりで送ったのだが、もしかして迷惑だったかも…(苦笑)
お忙しいとこすみません;

実際、送らせて頂いた文には題名をつけるのを忘れていました…(馬鹿
ってか本当は書いておいたんですけど、何かいつのまにか消しちゃったみたいで…(笑)
送信メール見た時に気づきました…あんなに気をつけていたのに。

mischiefは、前にボツにしたmischiefの生まれ変わりというか、いや生まれ変わってないんだけど、
まぁ、そんな感じで…。
前のmischiefは、近いうちにゴミ箱の方で再UPしようかなーなんて思ってます。
ってか、このさかさま言葉難しすぎです。