翼が欲しい
大空高く飛べるような。
空を飛びたい
永遠の夢物語のような。
「いつか飛べる」
ふと、見上げると一面青い空。そこを一羽の鳥が大きな羽を広げて飛び舞う。
それは当たり前の事。だけど、何故それが当たり前になった?
どうして、鳥は羽があるのか。
どうして、鳥は飛べるのか。
どうして、人間は飛べなくて、鳥は飛べるのか。
どこまで、この青い空は続いているのか。
翌々考えて見れば、不思議な事ばかりだ。
ー俺も空を飛びたい。翼があったら、この囚われから逃げ出したい。
翼があったら、何もかも解放される事が出来るのに…。
そして、自由に……
「何やってんのん。空ばっか見て」
急に横から聞こえてきた聞き覚えのある声に驚いて肩をびくりとさせた。声のした方に顔をやれば、そこには何時もの栗色のツインテールの少女が突っ立っていた。その姿を確認すると、空を見るのをやめ、少女を放って学園へと足を進ませた。
文句声が返ってくるかと予想していた後ろから思いがけない言葉が飛び込んできた。
「鳥は空を飛べてええなぁ」
それは先程、自身も心の中で何度も考えていた事。
この少女も同じ事を考えていたとは。
黒髪少年は、その言葉に反応すると、足を止め、ゆっくりと少女の方へと振り返った。少女は、嬉しそうな表情で真っ直ぐ広がる空を見上げている。そして、此方を向くとにっこりと微笑んだ。
「ウチ、空を飛べたらきっとじーちゃんに会いにいくと思う」
同じだと思った考えは少し己とは違くて。
少女の気持ちは"逃げたい"ではなくて。
その表情は何故か自信に満ち溢れている。
「会えたらな、何時もみたいにぎゅーって抱きしめてもらうん」
その表情はとても幸せそうで。
寂しさ等、ひとつも見つからなくて。
『単純かな?』と照れながら笑う少女。少女と自分の大きな違いに目を疑った。自身はこんなにも逃げたいと心の奥で何度も思っているのに。暗い気持ちは、不思議な感覚へと何時の間にか変わっていった。
「……鳥はずるい…」
思わず、感情を露にしてしまう。
鳥はどうして飛べるのか。
どうして人間は飛べないのか。
……ずるい。
「ウチはずるいとは思わへんよ」
あまりにも違すぎる自身と少女の意見に思わず目を大きくあけて唖然と少女を見やる。少女は、何時にもなく真剣な表情をして、此方を真っ直ぐと見ている。
「人間だって鳥が出来ひん事いっぱい持ってる。
………それに、人間だって誰でも翼を持ってると思うねん」
「………………は………?」
にこり、とまた優しく微笑んで、少女はまた高くて青い空を見上げた。そして、そこに今だ羽ばたいている一匹の鳥を見る。大きく大きく羽ばたいて、何処かへ向かおうとしている鳥を。
「空を飛べるかは分からへんけど、自由になる事は出来ると思う……。頑張れば…願えば……誰だって自由に羽ばたく事が出来ると思うねんっ。
ウチだって…何時かはちゃんとじーちゃんに会える。
…………棗だって、いつか飛べる」
少し恥ずかしそうに言う少女。ぎこちないその言葉だけれど、確実にその言葉は自身の心を癒していった。幾つもの希望を植え込んだだろう。貰った幾つもの言葉を飲み込むと、分からないように込み上げてきた嬉しい感情を笑みに変えてみた。
どうして、此処まで少女は輝いているんだろう。
どうして、こんなに少女は眩しいのだろう。
どうして、こんなに自身を癒してゆくのだろう。
「あっ、チャイムや!先、戻っとるからね!」
丁度良く鳴り響いたチャイムに技とらしく反応して少女は慌しく走っていった。
その後姿を見送ると、直ぐに芝生の上に寝転んだ。さぼる気だ。
そして、止められない感情が溢れてくる。
「……いつか、飛べる………か…………」
誰しも翼を持っている。
誰しも羽ばたく力を持っている。
そう、いつか飛べる――――。
END
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何だかこの頃いちゃいちゃものよりこういう人間についての小説にハマり中。
何か最初蜜柑『空飛べていいなぁ』とか言ってたよね。何か話とかみあってないよ(ぇ
まぁ、いいや。