「血液型は?」
「………B」
「あなたのアリスは?」
「…炎」
「じゃあ、あなたの好きな食べ物は?」
「教えて、あなた」
今、クラスの仲をもっと深める為に互いのプロフィールを知ろう、という授業が行われている。二人一組で相手のプロフィール等を聞く、というのが主な授業活動だ。
勿論、パートナーだからなのか蜜柑の相手は棗である。だるい顔をしていながらも、先程まで棗は蜜柑が問うた質問を答えてくれていたのだが、一つ教えて貰えない質問があった。答えてくれないせいで今、思うようにプリントに書いてある質問内容がクリア出来ずにいた。
答えてくれない内容というのがこれ。
『あなたの好きな食べ物は?』
その質問になった瞬間、棗の表情がひきつったのが分かった。
何か焦っているような、何と言うか…。
「ええ加減教えてよ」
時間は刻々と過ぎていく。質問内容が載ったプリントを見ると、誕生日、血液型、自分のアリス等、そこまでは順調に進んでいた事が分かるのだが、たった六問中の最後の質問の『好きな食べ物』だけ綺麗に空欄になっていた。
たった六問で此処まで時間が掛かるとは。周りを見ると、皆質問が終わったらしく、休憩をとっている。終わっていないのは自分等二人だけのようだ。
確か、鳴海先生が質問を全部完成させなければ居残りだ、と何とか言っていたような気がする。
そんな事を思い出しながら、蜜柑は長い息をついた。
「なぁ!何で教えてくれないん!?」
「……るせぇ」
何故か、そっぽを向いて答えようとしない棗。
そんな棗にため息一つ落としながら、蜜柑は諦めずに一応ある程度浮んだ食べ物を言って行く事にした。
「うーん……チョコレート!!」
「………………」
「ラーメン!!」
「…………………………」
「…うーーーーーーん……………」
「………いちご!!!」
その果物の名を口にした時だった。
「……………………っ!」
棗が必要以上にその名に反応して肩をびくりと跳ねさせたのだ。
その光景を蜜柑が見逃した訳はなく……
「…なに、棗いちごが好きなん!?」
「うるせぇ!!!黙れブス!!!」
(分かりやす……)
明らかに焦っている棗。
頬は恥ずかしそうにほんのり赤い。
初めて見た、そんな顔。
その表情を見て、直ぐに棗の好きな食べ物が『いちご』だという事が分かった。
意外な真実に蜜柑は込み上げてくる笑いを一生懸命に堪えながら、歪む字でプリントに『いちご』と記入した。
意外すぎて面白かったから笑ったっていうのもあったけれど、でも、もう一つ、少し棗の心に近づけたかなぁ、なんて思って嬉しくなって、笑ってしまったり。
(そりゃあ、隠すよなあ…………)
だって、棗がいちごだなんて……。
なんて、堪えていたのを忘れてひとつ笑いを吹き出すと棗に思い切り頭を叩かれた。
―――面白い…。
意外な事の面白さ。
新しい発見。
『あなたの好きな食べ物は?』
そんなに嫌なら、適当に言えば良かったものの…。
それといい、『いちご』という結果といい……
「見かけによらず、可愛いとこあるやないか…」
そう聞こえないように呟いたのは、しばらしく秘密にしてようか…。
END
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いつも、蜜柑がからかわれたりする感じだったので反対の立場を目指してみました。