「いつか、光が」


毎日、闇の世界を歩いてた。
歩きたくもない世界を歩かなくちゃいけなかった。

毎日、闇を歩く繰り返し。
俺が歩く日々はみんな同じだった。

それがずっと続いていたけれど慣れる事はなかった。
その世界に慣れたら、終わりだと思ったから。
その世界に慣れたら、本当の闇にのまれてしまうから。



だから、毎日のように反抗して逃げられない現実から
一生懸命に逃げようとしていた。





本当は闇の世界になんて行きたくない。
本当は光の世界に行きたかったんだ。


俺は知っていた。
光の世界があるという事を。

闇とは正反対の、希望に満ち溢れたそんな世界。


皆そんなのない、って言うけれど。
俺は絶対にあると思った。
そう信じていた。



行きたくもない闇を歩きながら、俺は出会った。
闇を全て渡りきる直前に、俺は出会ったんだ。

―――アイツと。



その頃の俺は半分 心を闇に支配されていて
出会った当初の光は少しうっとおしかった。

甘ったるい言葉を平気でかけてくる。
分かったような口を利いてくる。


『口ではそう言ってても心ではそう思っちゃいねぇんだろ』

本当は光を求めていた筈なのに。
闇を歩きすぎたせいか、心が物凄く変化していた事に驚いた。




けど、光はうざったいくらいに俺に近づいてくる。
必死で俺の闇を消そうと近づいてくる。


何時の日か、何時の間にかその光に愛しさを感じていた。
愛しさと共に、俺の心には光という小さな希望も生まれて。



魔法みたいだった。







風に吹かれて揺れる髪。
その後姿が愛しくて 愛しくて。
思わず、その身に触れて、自身に寄せる。


今居る自分が嬉しくて。
君がくれた様々な光を想うと嬉しくて。

笑顔を見せずにはいられない。




「………待ってた」
「……へ…っ?なつ、め………?」


光は抱き寄せられた事よりも俺自身の笑顔に気をとられているらしい。
だって、見た事もない笑顔 初めて見せたその幸せそうな笑顔。


「………待ってた…ずっと、ずっと……光を…」


待ってた 君を 光を 蜜柑を。
俺の心を光に変えてくれる日を待ち侘びて。

空想の世界は本当にあった。



光の世界 俺を変えてくれた光の世界。
光の世界 それは俺が愛した蜜柑という名の世界。


「……あり、がと…う……来て、くれて…ありが………ッ」


嬉しくて 嬉しくて 涙が出てくる。
君が居てくれて本当に良かった。
君が来てくれて本当に良かった。


「……な、つ………泣いてる、ん……?」



ありがとう――…。


END
-------------------------------------------------------
棗の蜜柑に対する想い。
本当に蜜柑の存在は棗の運命を大きく変えました。