確かな感情 「あんたなんか大っっ嫌いや!!」 嫌い 大嫌い そんなの言われ慣れていた。 言葉にしなくてもきっと誰もが俺を嫌ってる。 そんなの分かってる、最初から。 嫌い そう言われるのを分かっててやっている自分が憎い。 そんなことしか人にしてやれない自分が情けない。 そう思うのはどうしてだろう。 いつもなら…… 『嫌うんなら勝手に嫌えばいい』 そう思っていたはずなのに。 こいつの場合は……。 「……お前は嫌いか?」 お前は俺を。嫌いなのかと。 気になる。 胸が痛くなる。 心が"イヤダ"って叫んでる。 「そうや!あんたなんか大嫌いや!!」 ずきん。 痛くなる、なんなのか、これは。 心が痛くて、とても悲しい、虚しい。 「…そう、か……」 喉につまる何かを感じながら、精一杯声を出した。 何故かここから逃げたくて。 何故かここから離れたくて。 無意識に足を進める。 今、自分がどんな表情をしてるのか。 今、自分はどんなことを感じているのか。 それすらも分からなくて。 初めての嫌な気持ち、 いや、前から感じていたのかもしれない何かを噛締めて。 そんなときに響いたひとつの声。 「あんたはそれでええん…?」 目に突き刺さるその言葉に、 変な感情が溢れてくる。 「………は…?」 「…そう言われて、あんたは嬉しいんか、って!!」 嫌い 大嫌い きっと、言われるたび、心に針を刺してきた。 気づかないうちに、心を痛めてきた。 『嬉しいんか、って!!』 ……嬉しい―――? 馬鹿言え…… ・ ・ 「…嬉しい訳ねーだろ」 今、初めて分かった感情、確かな感情。 今、感じ取って。今、分かる。 そんな確かな感情。 もしかして、これもお前の力なのか。 いや、そんなはずはない。 だって、こいつはただの馬鹿。 そう、本当に、本当にこいつはただの馬鹿だった。 「安心した…」 「……はっ?」 風に吹かれて笑う君。 何かに吹っ切れたように優しく笑う。 「嬉しい、なんて答えたらどうしよ思っとったん…」 「俺はM(マゾ)じゃねー」 「そういう意味やないよ……………」 「………どういう意味だよ…」 表情は笑ってて。 だけど、心は真剣で。 こんな俺のために真剣に、こいつは。 「…棗が、自分の心ちゃんと持ってたから……」 自分の心………? 髪が揺れる、風に吹かれて。 柔らかいその髪が、優しさに包まれて。 「心がなくちゃ…辛いとか、 嬉しいとか、一切感じられなくなってしまうやん…」 ――――――…… …まだ俺にも何かを感じる心があるのか。 そう考えると、嬉しくなる。 嫌い 大嫌い そんなの嬉しくなんかない。 寧ろ、辛くて辛くて死んでしまいそうなくらい。 「……生意気」 そう言うと、また心地良い怒鳴り声が耳を通り抜けてきた。 馬鹿なことを言って俺に何かをくれたそれ。 まだ、歩き始めた心だけれど。 少しずつ、少しずつ、君と一緒に歩いていきたい そんな確かな感情―――…。 END... ----------------------------------------------------- 出会ってまもない、棗に悪印象しかなかった頃の蜜柑ちゃんの話(棗視点) なんかこの頃小説なんだか詩なんだかわからない作品にハマってます。 |