なにもかも初めてやった

だから、顔がめっちゃ真っ赤になってん…。


そんな方法ありえへん――!







声 が 出 る 方 法






(……あかん…。)

あかん!あかん!あかん!





―――――――あかん!!!!

朝。蜜柑はベッドから軽く起き上がり、掛け布団の裾を両手で握っていた。
顔は、青ざめている。


どないしよ…








―――――――――――――――声がでえへん…。

あんま風邪なんか引いたことあらんから、甘く考えとったわ…。
喉が痛とぉて…声がでぇへん…。
誰とも会話できないうえ…蛍とも会話できひんし…。
昨日の晩、寒いん我慢して外で野良猫と遊んどったんが悪かったんや…。
これじゃ、棗に馬鹿にされるんは目に見えてるやんか…。
それに…パーマにバレたらめんどうやし…。

そう思うと、掛け布団の薄いシーツを汗ばむ手でぎゅっと握る。
おそらく、握った後のシーツはしわくちゃになっているだろう。

「…あ"…っ!ごほごほ!!」

試しに喋ってみようとするが、このざま。声ががらがら。無理にだそうとするとむせる。あきらめたのか、蜜柑はベッドから軽く起き上がると着ていたパジャマのボタンを一つ一つ外していく。

(あー…学校いややぁ…)

いつもは、楽しみでたまらない学校も、声が出ない為か、いやに感じてしまう。そして、着替えが終わり、髪の毛もいつものように二つにしばり、整えた。…準備OK。けど、蜜柑の心は準備OKではなかった…。




はぁ〜と心で溜息をつきながら、部屋のドアを軽く開ける。
そこには…

「よぉ。」

棗。ドアを開けたらびっくり…棗が目の前に突っ立っていた。どうやら、偶然通りかかり、そして、偶然ドアが開いて、偶然そこに居たのであった。当然、蜜柑は普通にしていられるはずがない。目を真っ白にさせ、口はあんぐり間抜けにあいている。

「…なつっっっ!!!!!…っ!!」

出そうと思った声はつっかえてしまった。そして、慌てて蜜柑は口を塞ぐ。いつもと違う蜜柑に棗は、繭をひねらせた。その、繭を蜜柑は見逃さなかった。

(ばれてもうたか……!?)

そう思い、頭を下げたまんま、目だけ上を向き、苦い顔で棗を見つめた。
けど…



「…とうとうおかしくなったか。」


………気づいて……ない…?

いつもは、そこで一発蹴りでも入れてやる蜜柑だが、今回ばかりはバレてしまうといけないから我慢した。そして、その言葉に無理やりに納得し、首を縦に振り、早く話を終わらそうとする。

面白くないのか棗は蜜柑をギロリと睨んだ。そして、一言『つまんねぇ…』と言い捨てた。その目を見ぬふりして、一緒に歩いて教室へ向かった。

(風邪なんか引いておらんかったら、今頃大きな声だして棗と殴り合ってるんやろうなぁ…)

いつもと比べた物足りなさが蜜柑の寂しさに変わる。そして、蜜柑は下を俯く。


(よりによって棗に会うとは思わへんかったなぁ…。)

困った顔のまま、棗を横目で見つめた。

ん……ヤバ。クシャミがでそうや……

こんなとこで……棗の目の前でクシャミなんかしたら、風邪を引いている事が解ってしまう。それだけではすむはずがない…ただでさえいつもとちがく、喋らない蜜柑に謎めきを抱いている棗なのだから、簡単に風邪で"声がでない"…そんな事は解ってしまう。悪魔でこいつは感のいい男だ。こいつにだけは知られたくない。知られたらきっとその弱みにつけこんで何かしかけてくるだろう…。蜜柑が恐れていた難題であった。


「……っ」

でそうになるクシャミを無理やりに息を殺して止める。一回目は上手く止める事が出来たが、クシャミというのは一回じゃすむわけもなく…。

「…おい。どうした」



急な棗の言葉に慎重に息を殺していた蜜柑は、びくりと驚き…








はっ…はっくしゅん!!!!!!!



…やってもうた――。



「…水玉……風邪か?」

バレた…。
もう素直に本当のこと言わなあかん…。
これ以上ごまかしはきかへんし…。
もう、馬鹿にされても何されてもええ!もうあきらめてやるわ!!

そう、覚悟を決めると蜜柑はぐっと目を強く瞑り、こくりこくりと二回縦に首を振った。



「…やっぱりな。」
(……気づいとったん…?)

蜜柑の心で言った言葉を察知…というより、蜜柑の表情があまりにも解りやすかったのか理解した棗は……


「水玉の事を解んねぇくらいの低レベルな男じゃねぇよ…俺は。」

(嬉しいような…貶されてるような……わからへんなぁ…。)

けど、なんか知らんけどちょっとだけウチのほっぺがあっつうなんたんは確かや…。

すると、棗は持っていたカバンから何故かノートを取り出した。
そして、それを蜜柑に差し出し…



「これに書いて言いたい事伝えろ」





―――――――棗……。

差し出されたノートを両手で静かに受け取った。開いてみると、棗の汚い字ばかりで、かなり使い古してあると見た。けど…

(嬉しいやんけ…阿呆。)

そして、蜜柑はカバンから筆箱を取り出し、またそこからシャーペンを取り出すとさらさらとそのノートになにか書き始めた。そして、それを棗に見せた。





【ありがとう】
「……別に。」
【意外と優しいんやね。馬鹿にされると思っとったんに】
「…るせぇ。そんな事で馬鹿にしてる暇があったら昼寝してる方が百倍マシ。っつーか……
テメェは文を書くときまでその言葉使いなのかよ…」
【うっさいわ!】

確かに通い始めた心と心。
今、確かにときめき始めた―。





―…棗は、セーフ。残りはパーマや、たちの悪い男子ら…。

【パーマなんかにバレたら何されるかわからへんなぁ…】
「あ?」
【なんか方法あらへん?】
「俺に聞くな。自分で考えろ。」
【阿呆!!大ボケ!!ボケナスーー!!!】


「っせぇなぁ……方法なんてあるわけ………」

棗が一瞬言葉を止めた。
そして、やっと動いたかと思うと、それは不気味なにやっとした笑みだった。



「おい、水玉。方法があるぞ。」
【ホンマに!?どんな方法なん!?】

そう、蜜柑が嬉しそうに顔をあげ、方法を聞こうとした時だった。さっきまで少し離れた位置にあった棗の顔が、気づいたときには目の前にあって……そして、目の前に真っ暗な影が出来た―。ドサッとノートが音を立てて蜜柑の手から落ちるのが解った。学園の白い廊下に移ったのは重なり合う影二つ。



「……っん…」

強引で、濃厚な口付け。小学生には過激な、何度も角度を変えてといういやらしい口付けだった。ただでさえ、熱で熱い唇なのに、もっとあっつく感じる。棗の胸をどんどんっと強く叩いてもいやらしくくっついている唇はびくともしない。ただ、彼女を抱くその腕を強めるだけ。

そして、何分かするとその二つの影はまた元どおりに離れた。


「…っはぁ!!なっ…なにすんねん!いきなり……っっ!!!!!!////」
「ほら。」
「なんやねん!!??」
「治ってんじゃねーか。」


「……………あ。」


「いきなりの事で風邪なんかふっとんじまったろ。」




「……っっ…でもっっ!!






           そんなやり方あるかあぁーーーーーーーー!!!!!!!!!//////」




END.....
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初書きアリス!!やっぱ蜜柑×棗でしょう。ちょっと棗喋りすぎ…というか、ありえない(汗
初めてなもんでおかしい部分もあると思いますが許してやって下さい!!
それでは〜w