彼女の心をモノにしているアイツは
―――まさしく君の隣の恋泥棒……?



 の 隣 の  泥 棒



忘れ物を取りに教室の戸まで来ると、ツインテールの彼女の姿が目についた。
疲れているのか、彼女は自分の席にへばりついて静かに寝息をたてていた。
彼女は、普段授業中にも居眠りをすることがあるが、そんなに改まって寝顔を見ることが
なかった棗はその場から彼女の寝顔に目を奪われる。

その寝顔に心を奪われ、『蜜柑』と呟いて近くまで行こうとしたそのとき。
蜜柑に夢中になっていたためか、気づかなかったもう一人の人物に足をとめた。
その人物は、すらっと蜜柑より、いや、自分より遥かに背が高く、オシャレなニット帽をかぶっている。
そして、蜜柑に近づくと、自分の人差し指で優しく蜜柑の頬をつっついた。

「おーい、チビ。起きろー。」

その人物は、自分にとってライバル的存在の、影使いの先輩だった。
この男は、気がつくといつも蜜柑のそばに居て、ちょっかいを出したり、抱き上げたり。
棗にとって、不愉快でしかなかった。

見つからないように、戸の裏側に隠れると、棗は聞き耳をたてた。
やはり、気になってしょうがないのだ。


「ん…ぅ、つば、さ…先輩…?」
「いつまで寝てんの、早く帰らねぇとセンコーがうっせぇぞ〜。」
「……ぅ、寝起きやねん…、そんな早く動けへ、ん…少し話ししてこ?」
「…話って、おいおい。マイペースだなぁチビは。」

少し呆れた口調で翼はそう言うと、蜜柑の隣の席に座り込んだ。
そこは丁度……

(………俺の席…。)

棗の席に座って、翼は頬をつくと、蜜柑の方を向いて話だした。
蜜柑はまだ眠そうでうつろうつろ頭を揺らしていた。


「――チビはさぁ……俺のこと好き?」





いきなりの爆弾発言。
聞いていた棗は思わず肩の力が抜けてしまった。
"何を聞いているんだ、あの野郎は"と、繭を捻らせると先程よりも集中的に耳をすます。
ちらっと、彼女を見ると、表情はあっさりとしており、どうやら翼の
発言を深くは取り上げてなさそうだ。そして、その表情から彼女の答えはやはり……


「うん!翼先輩だぁーっいすき!」

(―――……)

「そっかぁ!俺もチビだぁーっいすき!じゃあ結婚するか!」
「結婚!?ええよ!翼先輩とならウチ幸せになれるかもしれへん!」
「アハハ!じゃあ約束!チビは俺と結婚することに決まりー!」
「決まりー!」

翼はにっこりした表情で蜜柑と会話する。
そして、蜜柑は翼に抱きつき、翼は抱きついてきた蜜柑の頭を優しくなでる。
そんな二人のいちゃいちゃ声を耳に、棗は繭を強く捻らせた。
"こんなことをあいつらは毎日のようにやってんのか"そう考えるだけで腹立たしい。
この戸を突き破って、あの影使いの野郎を殴ってやりたいところだが、それじゃあ自分が
反感をくらうだけだ。
そんなことを思いながらも耳をすましていると…

「でも、俺と結婚しちゃっていいのか?チビのフィアンセの棗くんは?」



―――――…は?

自分の名前が出てきたことに棗は驚いて目をまんまるくした。
そして、少し開いている戸の隙間から翼の顔を伺った。
翼の目線は、自分の方にあり、にやりとこっちを面白そうに見ている。
どうやら、自分の存在にとうの前から気づいていたようだ。
翼にとって、蜜柑のことで棗を困らせるのが一番面白いのだ。
だから、先程から意味のわからない質問ばかりを蜜柑に出題していたのだ。
そんな翼に必要以上に腹がたって今までにないほどに睨みつける。

「な、なんで棗なん…?ウチのフィアンセちゃうし…。」
「チビ、棗のこと好きじゃないのか?」
「好きじゃないって訳やない…うーん…好きやけど…」
「それは恋愛感情として?」

(……あいつ、何聞いてやがんだ…。)

そう思いながらも、やはり蜜柑の答えが気になる棗は蜜柑の表情を伺う。
蜜柑は下を俯いて、悩んでいるような表情をみせていた。
そんな彼女の重い表情を見て、棗は『やはり自分はそんな存在じゃない』
と、ひとつ息をついた。――…が。



「…わ、からへん…。」

彼女のその声を棗は聞き逃してはいなかった。
そして、珍しく軽く頬を桃色に染めながら蜜柑の方を向きなおした。
そんな棗の素直な行動を見て心の中で笑っている翼には気づかずに…。

「…好き、なんやけど……
 それが…れん、あい…感情とか…そういうのは…。

で、でも…!
棗がなっ、元気なかったり…すると、ウチまで哀しくなって…っ」

(―――――………)



「――…はい、わかりましたよ、おチビさん。
 チビの王子様は棗って訳だ。」
「……えっ…」
「そういうことだろ?じゃあ、俺は帰るよ。
きっと今から現れるチビの王子様がチビをおくってってくれるだろうから。」
「な、棗が…!?」
「じゃあな〜。」
「あ…っ、さよう、なら…」




ガラッ

戸を開けると、やはり棗が怖い顔をして翼を睨みつけていた。
翼もその怖い顔には逆らえず、ただ笑っていた。

「どういうつもりだよ、あんなこと聞いて…」
「別に理由なんてないけど?」
「…ふざけんな……っ」
「おーっ、こわっ!
 でも、なんで怒ってんの。お前ら両想いじゃん」

「はぁ?あれだけあいつを
 自分のモノにしようとしといて何言ってんだよ。」


その棗の言葉に翼は『ん〜?』と声をもらすと繭を捻らせた。
そして、にっこりと笑う。

「それ誰に言ってんの」
「はっ?テメェに決まってんだろ」

怒り限界の棗は少し乱暴の口調で言うとまた翼を睨みつけた。
そんな棗の表情を見て、翼は『ふぅ』と息をつくと、またにっこりと微笑んだ。





「実際のところ、チビの心をモノにしてんのは自分じゃねぇの?」


「……………………はっ?」
「罪におけない男だねぇ…じゃあな。」

『チビをちゃんとおくっていけよ』そう付け足すと翼は大きく手を降って
廊下へ消えていった。




「………やられた…。」

棗は静かにそう呟くと、
愛しい彼女が待つ教室の戸を静かに開いた。

彼女の心をモノにしているアイツは
―――まさしく君の隣の恋泥棒……?


END....

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わっけわかりません(本音)
なんかこの頃書いてる途中で意味わかんない小説になってきてしまいます。
いや、前からそうだったのだけど、悪化したというかなんというか…くっそおおーー!!!
まぁ、要は恋泥棒は翼だと見せかけて、実は棗だったというお話(ぇ