| 「…あした」 「へっ?」 「なんの日」 「……普通の日ちゃうん?」 「…………。」 「誰かの誕生日やったっけ?」 「…………。」 「2月14日やろ?……ふたつのいし…?」(2=ふたつ 14=いし) 「……………死ね。」 「はぁっ!!?訳わからん!」 ほ ん ね ご こ ろ 「……棗…なんか怖いんだけど…。」 「あ?…なんだお前か。」 どす黒いオーラを醸し出している棗に流架は恐る恐る言った。 周りには気まずいオーラをだしているクラスの皆、棗を横目で見つつオロオロしている。 いつも寝ているか雑誌を読んでいるのに今日の棗は足を乱暴に組み、怖い顔をしているのだ。 その光景は誰が見ても『怖い』と思うだろう、それぐらい機嫌が悪そうなのだ。 「……水玉…」 「…え?」 「…あいつはなんであんなに馬鹿なんだ…?」 「…さぁ。佐倉がまた問題起こした?」 「ああ、思いっきりな。」 「…………どんな。」 流架の"どんな"の言葉に棗は軽く唇を閉じた。 そして椅子に座っている状態で背中に体重をかけ、後ろの席に背中を当てると、 ふー…と軽く息をついた。 "どんな問題だろう"…自分でもよく解っていなかった。 無意識に蜜柑のところへ行き、バレンタインである明日のことを質問した。 "何のために?"……解らない。ただ、気づいてほしかった………自分のコトを。 彼女に少しばかり期待していたのかもしれない…何かを。 それがなんなのかは解らないけれど。 「…………佐倉にチョコ貰いたいとか?」 「……………………… ……はっ?」 「…明日バレンタインじゃん。」 「…誰があいつなんかに」 「顔に書いてあるけど…。」 「………………………。」 「バレバレ…。」 水玉にチョコを貰いたい…?……俺が?どうして。 ありえねぇ。俺はあいつが嫌い………… ………なんだと思う。 けど……… "佐倉にチョコ貰いたいとか?" 心の中で流架の言葉に納得している自分がいる。 ありえねぇ あ り え ね ぇ ア リ エ ネ ェ ―――――… 冗 談 だ ろ ? …そう思いたい。 「俺も。」 "オレモ"いきなり流架が言った言葉。 何を言っているのか全く理解が出来なかった。 ただ、これだけは解った…流架が今とてつもなく真剣な顔をしてるってこと。 「…何が。」 「俺も……佐倉からチョコ貰いたい…。」 「…………………… ……ふーん。」 「ふーんって…!もっと嫌な顔しろよ!?」 「俺には関係ないし。ま、頑張れよ。」 片手を軽くあげ、棗はそう言うと『トイレ』と適当なことを乱暴に言い捨てると スタスタと行ってしまった。 これ以上そこに居たくなかったのだ…何故か。 「待ってよ棗…!わざわざあいつに明日のこと聞くってことは好きなんだろ!?」 流架の叫びに聞き耳も持たず、棗は振り向かぬままブラブラと流架に手を振ると やはり、何も言わず行ってしまう。 「なつめーー! ――…俺はお前がライバルでもいいからなーーー!!」 俺があいつを好き…? ――――…わかんねぇよ…そんなこと。 ・ ・ ・ ・ ・ 途中、偶然あいつに会ってしまった。 蛍と呼ばれる女子と一緒にこの能天気野郎は廊下を歩いていていつものように 笑顔でこっちに近づいてきやがった。 「なっつめー!」 高くてでかい声。 普通ならそのうっとおしい長い髪の毛を手でつかんで自分特有の炎の力【アリス】で 完璧に燃やしているだろう。思うのも普通なら『ウザい』ぐらいしか思わないはず。 けど、そんな声が心地よく耳に通るのは何故だろうか。 (おかしくなったのか…?俺は…。) そんなことを思っているうちにあいつは俺の目の前に来た。 何故か変に落ち着いている自分が馬鹿馬鹿しかった。 「あんな!あんな! 今朝棗が言ってたことまだわからへん!好い加減教えてや!」 (どんだけ馬鹿なんだこいつ…。) 「……うっせー。黙れ。」 「うっさいとは何や!答え教えてくれてもええやろ!? 明日なにがあんねん!」 「バレンタインでしょ。」 ―――…… 隣で二人の話を聞いていた蛍がぽつり。 蜜柑が考え続けていた問題があっさりと解けた。 「………。」 「わー!蛍天才やーー!!」 やっと問題の意味を理解できた喜びか、大好きな蛍の天才さへの 喜びか、蜜柑は蛍の両肩に手をおいてぴょんぴょん跳ねて喜んだ。 蛍の一言で蜜柑は何もかも理解した…と思ったが。 「…で、バレンタインがなんなん??」 理解してなかった。 「…………… …………………べつになんでもねぇよ。」 そう言うと棗は蜜柑の横をすっと通り抜け歩いていってしまった。 残された蜜柑と蛍はというと…。 「――…意味わからん!! 自分で問題だしといて何やあの態度!腹たつわ〜!」 「…あんたホント鈍感よね。」 「ウチのどこが鈍感なんよ〜〜!?」 「全部よ全部。」 「なして!?なして!?」 「――…日向くん、あんたのチョコが貰いたいのよ。」 「…へっ?」 ―――――…… ・ ・ ・ ・ ・ 知らぬうちに逃げるようにして初等部の外に出ていた。 そして、よく昼寝にくる心地良い木の上で横になる。 あいつも訳わかんねぇけど…俺も訳わかんねぇ…。 勝手に聞いて、勝手に怒って………。 嗚呼…… なんなんだ…今日はどうかしてる…。 髪をくしゃりと右手で乱暴に押しつぶすと棗は長い息をついた。 自分でも解らないモワモワした気持ちが苛々に変わる。 今、心にあるのは…アイツ。 認めたくないけれど、どこかで納得している自分が憎らしい。 ガサッ 「誰だ!?」 ――…… 「…トイレ行くんじゃなかったのかよ…。」 「…る…………っ…」 流架だ。けれど…… "俺も……佐倉からチョコ貰いたい…" 急に蘇ってきたあの言葉が胸に突き刺さって声が思うように出ない。 その突き刺さった痛みが何なのか解らないまま… どうしてよいのか解らずに流架と目をそらしてしまった。 木で寝転がる棗を見上げながら流架もそんな棗を見て思わず口をつむぐ。 気まずい沈黙が目を痛くさせた。 沈黙を破ったのは流架だった。 「……なつ…め。」 「…………………んだよ…。」 「あのさ…俺が…佐倉からチョコ貰いたいって言ったとき… ……どんな気持ちだった…?」 ―――……… 「…………知らね。」 「なんだよそれ。…嫌だったんじゃねぇの?だから逃げたんだろ。」 「……別に。」 何を言っても目線を合わせずに誤魔化す棗。 はっきりしない棗に流架は…………キレた。 ぐいっ! 「…っ!!??」 どさ!! 棗の服をつかんで地面に落としたのだ。 いきなりのことに棗も何がなんだか解らない様子。 「…ってめ!なにすん……」 ぐっ 流架が棗の胸倉をつかみ、自分の方へと寄せた。 流架は済ました顔をしている。 そんな見たこともない流架の表情に棗は混乱状態。 そして、何を思うのか流架はにっと無気味な笑顔を落とした。 そんでもって……… 「――俺……… 佐倉と両思いになったから。」 ――――――――――……………… ぼっ 「…っあつ!!」 棗が発した炎が軽く流架の制服の裾に燃え移った。 流架は慌てて燃え移った炎を手でぱたぱたと消した。 「…はっ…!流架……わりぃ…。」 無意識に火を発してしまったらしい。 混乱している棗を見て流架は呆れた表情でふーっと息をついた。 その行動はなにを示しているのだろうか…。 「…さっきのうそ。」 「はっ!!?」 「試してみたんだ、棗がどういう反応するか。」 「………………。」 「まぁ、予想はついてたけど…。」 制服のこげた部分を指差しながら流架は苦笑いしながら言った。 棗はまだ混乱しているらしい。 「―お前、佐倉が好きなんだよ。」 「……………んなわけ…」 「じゃあ、さっきの反応は何。」 「………………。」 …………………… 真剣にあいつのことを思ってみた。 すると、必要以上にあいつとの思い出(?)が浮かんできた。 『何で…戻ってきた…』 ((え…だって…心配やったし…)) 『……ボケ』 ((あんた… ウチのパートナーなんやから)) 一緒に帰ろう 学園に ――――…みんなまってる)) ((なつめーーっ)) ((棗っっ!)) ―――――好き……なのか………? 俺は……… ―――――アイツノコトヲ。 「お前が好きじゃないっていうんなら…… 俺本気になるけど……いいの?」 ―――…あー………… ちくしょー……… 「――…好きだっつーの。」 …俺も最高の鈍感野郎だな……… ・ ・ ・ ・ ・ ・ ――バレンタイン当日。 「ほったるうぅーっ!ウチの愛のこもったチョコレートもらってや!」 「有難う。机に鍵閉めて保存しておくわ。」 「ひどぉっ!腐ってまうやん!」 ……あいつ…チョコのこと解ってんじゃねーか…。 そんなことを思いながら棗はうっとおしいような表情で パーマから貰ったどでかいチョコをカバンにしまっていた。 蜜柑はというと、ところどころの人にチョコを配り歩いているようだ。 すると… 「なっつめくん!!」 ナル先生だ。手には可愛いピンクの袋をもっている。 その袋の生地は薄く、小さなチョコが3〜4個入っているのが解る。 「これ誰に貰ったか解る??」 「…水玉だろ。」 「あったり〜!当然棗くんも貰ったよね?」 「もらってねーよ。」 「…えっ。 蜜柑ちゃん、もう皆に配り終わったって言ってたよ?」 「………………。」 すると、流架と委員長がやってきた。 「棗〜っ、佐倉から貰った?」 「……お前ら貰ったのか?」 「え…うん。」 「貰ったよ。」 「……棗…貰ってないの…?」 二人の手にはやっぱりピンクの袋のチョコレート。 貰っていないのは棗だけのようだ。 あいつ……… あんだけ悩んどいて最後までくれねぇ気かよ……。 ・ ・ ・ ・ ・ ――放課後。 誰もいない教室にあいつは居た。 「おい。」 「ぎゃぁっ!!」 あいつの髪を後ろからぐいっと引っ張ったのだ。 「…っ!いきなり何すんねん!心臓止まったかと思ったわボケェ!!」 「ボケはてめぇだ。……お前なんか忘れてねぇか?」 「はぁっ!?なにを忘れてるっちゅーねん!!」 「クラス全員にチョコ配ったらしいな。」 「なんで知ってるん?」 「聞いたから。」 「へぇ〜。4時間かけて全員分作ったんやで!もう疲れたわ」 「全員分ねぇ……本当に?」 「馬鹿にしとるんか?ホンマに決まっとるやんか。」 「俺の分は?」 「………………忘れとった。」 「……………………。」 「………すまん…。」 「…………死ね。」 ぼっ 「ぎゃあ!!!」 ――――…ざけんな…っ。 俺はこんな女を好きになったのか…? 背中を向けて教室から出ようとした瞬間…。 「――…っ…うそ!……ホンマは…ある…。」 「………はっ?」 前に向き直るとあいつが真っ赤な顔して寄ってきた。 手にあるのはクラスの分より明らかにでかくて量の多いチョコレート。 量もそうだが色も違う、クラスの分はピンク色だが、棗の分は燃えるような赤。 「ごめん……なんか知らんけど…照れくさかったん…。」 恥ずかしそうに自分にチョコを渡す水玉の姿がやけに可愛く思えたのは 気のせいだろうか。そして、むしょうに嬉しかった。 「……俺のが妙にでかい理由は…?」 「棗が…何回も今日のこと言ったんに…気づかんかったお詫び…。」 「………お詫び?」 「うん。」 「………ただの?」 「…?…うん。」 「…………それだけ?」 「うん?」 「…ま、いいけど。」 自分の気持ちに気づいたからには 強引にでも いつかあいつにとっての特別な存在になってやろうじゃねぇか。 「……さんきゅー…。」 ・ ・ ・ ・ ・ 「今回は負けのようね、乃木くん。」 「……………え…っ?ああ…。(なんでそんなこと知って…)」 そんな二人の光景を影で見ていた蛍と流架のことを… 二人は気づいていないようです。 END... ―――――――――――――ここまで―――――――――――――――― やっと完成しましたぁ〜…。 バレンタインからはるかに日にちが経ってますね…。 遅くなって申し訳御座いません…。 なんだか作っているうちに意味不明になってきてしまって変な話になってしまいました。 というか、「こんな性格だった!?」ってキャラが多すぎました…ごめんなさい。 棗×蜜柑というより棗×流架だったような気もしますが…。 お持ち帰りは終了しました。 |