あんたは何時も私の大事なあの子を見てる。
ねえ、私じゃ駄目なのかしら?
「男前な彼女」
「あら、ルカぴょん。偶然ね」
動物小屋で動物達とじゃれている流架を蛍は発見し、技とらしく声を掛けた。
(偶然って…さっきからそこうろうろしてたじゃないかよ……)
抱き寄せていた犬をぽとりと下ろしてやると、流架はそう思いながらも蛍に向かって愛想笑いをした。しかし、愛想笑いをした流架の頬を蛍は険しい表情をして軽く叩いた。訳も分からず、流架はぽかんとしている。
「愛想笑いなんかすんじゃないわよ。バレバレよ」
それだけ言うと、蛍は流架がしゃがみ込んでいる隣に自身もしゃがみ込んだ。流架は『じゃあ、どうすればいいんだよ…』と思いながらも何も言わずにぽかんと叩かれた頬をさすっていた。
暫しの沈黙。あまり蛍とは面と向かって二人きりでは話した事がない流架は頭の中をぐるぐるさせて必死に次の話題を考えた。
しかし、意味も分からず叩かれた後だし、そんな気軽に話題を出して良いものか。どちらかいうと蛍と正反対の性格の流架は悩んだ。隣の蛍は無表情。何時もと同じ表情で、怒っているのか何なのか分からない。流架は、そんな彼女が少し苦手であった。
すると、意外に彼女から話題を切り出した。
しかし、その話題は少し痛い内容で。
「…あんた、蜜柑の事好きなんでしょ」
途端、流架からギクリといったような効果音が聞こえたが、流架は必死に気を取り直して首を横に振った。しかし、そんなバレバレな態度を蛍が気づかない訳もなく、蛍は静かに横でふっと笑った。
「嘘吐いたって無駄よ。あんた分かりやすいもの」
「……そ、そんなこと……っっ」
「あるでしょ?」
「………っっ」
ーやはり、彼女には敵わない。
また襲ってきたのはやはり長い沈黙。他の人とは違く、蛍と居るとあまり会話は弾まなかった。出る会話とすれば、痛いところをつかれる苦い会話や、嫌みだけだ。
此処から逃げ出してしまいたいが逃げられない流架は、蛍の隣で必死にまた次の会話を考えた。
しかし、また会話を切り出したのは彼女の方だった。
どんな会話かと思ったら……
「…クールな女性は好きかしら?」
「……っは!?」
考えもしなかった蛍の問いに流架は思わず間の抜けた声を漏らしてしまう。クールな女性=蛍、と言っているようなものではないか。そんな事を思いながら流架は先程よりも余計に悩まされた。
周りを囲んでいる愛らしい動物達も流架を心配そうに見詰めている。
次々に出される難しい問いに流架は混乱し、暫しの間黙り込んでいた。
そして。
「…正直に言うと、タイプなのよね」
急に出てきた爆弾発言。
流架も腸が煮え繰り返る程驚いて思わず顔をばっと蛍の方に向けた。
「……た、タイプ……って…何が…?」
一応、恐る恐る血の気が引けた表情で隣の彼女に問うと、彼女は、またふっと笑みを見せて、流架の白い頬に手を添えた。
どこからどう見たって、その光景は立場が間逆で、姫を口説く王子のような雰囲気だった。
「あんたがよ」
そう蛍がカッコ良く呟いた途端、蜜柑限定だった流架の真っ赤な頬が露になった。勘強い蛍はその頬の異変に直ぐに気づき、はんっと馬鹿にしたように鼻で笑った。しかし、戸惑う流架はそれに気づかなかった。
そして、蛍は言葉を続ける。
「…私じゃ駄目かしら?」
真剣な色っぽい蛍の表情に、流架は恥ずかしくて居た堪れなくなり、がばっと勢い良く身体を起こした。身体はカチンコチンに固まっており、顔は真っ赤に燃え上がっている。
「…あ、あの…っっそそそんなこと急に言われてもっ…え、えっと…」
声はどもり、パニック状態。
しかし、蛍はそれを裏切りように一言。
「嘘に決まってるじゃない」
無表情でそう言った彼女に、流架は固まった。
「…え…っ!?」
ドキドキ感を壊された流架は、混乱状態。そんな流架に構わず、蛍は腰をあげるとひらりと背を向け、『じゃあね』と言って初等部の方に向かっていった。
そんな理解不能な彼女の後姿を流架は呆然と見送る事しか出来なかった。
「…まあ、好きじゃないって言ったら嘘になるけど」
そう静かに呟いた言葉は流架には聞こえていなかった。
END
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初蛍×流架!!!
この二人には蛍攻めの流架受けでいてほしい。
そして一生、流架は蛍嬢に貢ぐのだよ。