(棗くんと蜜柑ちゃん)


その赤は、たらたらと流れてきて。蜜柑の目にも直ぐにとまった。
「あんた、指切ったん!?」
そう言って、少女がぎゅっと囲んだ少年の人差し指からは黒ずんだ血の赤が裂け目から溢れ出てきていた。
只今、物作りの為に使用されている鋭いカッターで棗は、誤まって切りつけてしまったのだろう。
「…触んな。ほっときゃ止まる」
そう素っ気無く言って、ばっと蜜柑から手を離したが、蜜柑は、何を思うのかまた離された手を掴んできた。
「何言うとるん!消毒せなあかん!」
だが、此処には消毒液などない。少し周りをきょろきょろして戸惑った蜜柑だが、直ぐにそれは何かを思いついたような表情になった。
そして、急に蜜柑は棗の血で溢れた指を自身の小さな口内に挿入させた。
その瞬間、飛び上がる棗の心臓。
「…ってめえ、何やって…!」
「消毒液がないんやから、仕方ないやろ」
一旦、口から指を出した少女は、『これでも消毒になるから』と付け足した。そんな積極的な蜜柑の行動に棗は珍しく焦っていた。
「……っ」
傷口に蜜柑の暖かい舌が入り込んだそれは少し痛かったがその半面、嬉しくて、幸せで、物凄くドキドキした。
「はい、これで一応は大丈夫やと思うよ」
挿入させていた指をあっという間にぱっと離し、蜜柑は、何事もなかったように自身の作業に戻った。そのあっけらかんとした蜜柑の行動が、棗は気に入らなかったのか何なのか知らないが……
「え〜っ、棗また!?」
今度は、わざと指を切りつけた。




よく効く薬

(まだ僕からはなれないでいて)




もっと自分にかまってほしいという可愛さをだしてみた。