(陽一くんと蜜柑ちゃん)


特に今日は何の約束もしていなかった筈だ。しかし自分の部屋のベッドには何時の間にか陽一と呼ばれる少年がしっかりとそこに座っていて。数学の課題をするのに集中していた蜜柑は彼の姿に気づくと、思わず目を見開いた。
「いつからおったん?」
「今さっきだよ」
「…ノックくらいしいな」
言い終えると、蜜柑は机の上の課題の問題を解くのに集中し直した。悪いが今は陽一に構っている暇はないのだ。昨日の金曜日に神野から”この課題を月曜日までに終わらせなければ高等部への進級はなしだ”と言われてしまったのだ。留年なんてことになったら皆に合わせる顔がない。だから必死にやらなくてはいけないのだ。課題のページ数も多すぎる訳だし。
しかし陽一にはそんな彼女の気持ちなんてものは全くどうでも良いのだ。想いを寄せる女性に構ってほしいと思うのは、当然のこと。
「ねえ、話そーよ」
「ごめんそれどころやないねん」
必死な蜜柑はすっぱりとそれを断る。しかしその言葉が陽一をムッとさせた。彼は蜜柑の恋人である黒髪と彼と同じように短気で、彼女が自分の思い通りにならないと機嫌を悪くするのだ。さらに拗ねるとややこしいことになるのは彼も陽一も同じだった。
「ねえ蜜柑。にーちゃん以外の男を部屋に入れてさ。これって浮気じゃないの?」
人差し指でベッドのシーツにぐりぐりと円を描きながら陽一は言う。その言葉に思わず蜜柑のシャープペンシルの動きも止まる。やはり”ややこしいことになりそうだ”蜜柑は静かに思った。
「どこが浮気やの。ってゆーか、よーちゃんが勝手に入ってきたんやろ?浮気ちゃうやん」
「でも追い返さないってことは受け入れてるってことだよね。浮気デショ?」
「…っやけど!ウチとよーちゃん疾しいことなんて全くないやん!!浮気じゃ…っ」
「まあ、浮気か浮気じゃないかはにーちゃん自身が決めることだけどね」
「……〜〜っっっ!」
ああ言えばこう言う。蜜柑は、だんだんと恋人である彼に似て捻くれてきた陽一を見、頭が痛くなった。小さかった頃はあんなに純粋で可愛かったのに!…純粋?いや、可愛かっただろうか?
陽一は今だにさらりさらりと嫌味のような言葉を漏らしている。相手にしていたら切りがない。そう思った蜜柑はまた課題に集中しようとした。しかしまた再度机に向けた身体は何かに引っ張られたことにより後ろからバランスを崩し、一気に何かの上に倒れ込んだ。がたんと音をたて、座っていた椅子も後から倒れた。
行き成りのことに思わず瞑っていた瞳をうっすらと開けると、一番最初に瞳に映ったのはドアップの陽一の悪戯笑みだった。驚きすぎて思わず後ろにたじろごうとするが、陽一がベッドから落ちそうになる身体を咄嗟に抱き止めた。また近くなった顔に、緊張と驚きが同時に込み上げて、声が出ない。そのまま口をぱくぱくさせていると、陽一が悪戯笑みをふんわりとした少年の笑顔に変えてこう言ってきた。
「…ねえ。浮気しよっか?」
そんな純粋で爽やかな笑顔でそんな言葉を口にするものではない。そうつっこみたいところだが、今の蜜柑にはそんなことを思う余裕もなかった。暫く間が空いた後、ようやく『はっ!?』と大声をあげる。
「ここベッドの上だしさ。何でもできるよ。何かする?」
しちゃう?と陽一は面白そうに付け足すとそのままバフンと蜜柑を押し倒した。蜜柑は混乱した頭をどうにか落ち着かせると、勢い良く陽一の胸を押し、倒された上半身を起き上がらせた。
「…すっするかボケ!ウチはぜーーったい浮気なんかせえへんもん!!」
「そう言われると、余計燃えるんだよね」
「な…っ!かっ勝手に燃えとけ馬鹿!ウチ課題せなあかんから!」
そう言って蜜柑はベッドから起き上がろうとした。しかしそれは、ぱしりと陽一に腕を掴まれてしまったことにより引き戻されてしまう。”ちょっと”と再度注意しようとするが、その時見た陽一の表情は先程の笑みとは全く違うもので。ぞくりとするような不気味な笑みだった。それは何かを企んでいるような笑みにも見える。思わず身体が麻痺し、その瞳に釘付けになってしまう。
「…それじゃ、勝手にするから」
囁くようにそう言うと、陽一は優しく蜜柑の唇にキスをした。勝手にしろとは、そういう意味で言ったのではなかったのに。
身体の動けなくなった蜜柑の唇を奪うなどいとも簡単なことだった。ゆっくりと舌で歯列をなぞり、その奥にある舌を絡めとる。かと思うと、直ぐにそれを離し、焦らすように角度を変えて深いキスをした。覚醒した彼女がドンドンと胸を押してくる。しかしそれを封じ、もっともっと深いキスをした。
暫くして唇を離し、陽一は蜜柑の白い頬を両手で囲むとにっこりと笑って言った。
「これって多分、浮気になるよね?」
小悪魔だ、蜜柑は思った。逃れられないように蜜柑の腕を掴んでいる手を、陽一はまだ離してはくれない。
「…言っちゃおっかな」
「へっ!?」
「蜜柑が浮気したーって言っちゃおっかな。にーちゃんに」
「やめ…っっじゃなくて!!浮気やないって言うとるやん…!!」
「それはにーちゃんが決めることだよね。でも嫉妬深いにーちゃんのことだから、キスしてもしなくてもこの状態なら彼には浮気だと解釈されるんじゃない?」
「…〜〜〜っっ!!」
蜜柑は思った。陽一が昔のまま『あー』としか言えない子供のままだったら良かったのに、と。あの時の彼は当然捻くれてはいたが、まだ子供だったのだ。憎たらしくとも可愛らしいと思えた。なのに成長した彼は益々捻くれた性格になり、べらべらと皮肉や嫌味を喋る”男”となっていた。今は憎たらしいとしか思えない。
「どうせ浮気ってことには変わりないんだし、いくとことまで行っちゃう?」
「…っへ!!?わっ!ちょっ…ちょっとおおおーーーー!!!!」
蜜柑の叫びも虚しく、陽一は強引に蜜柑を再度押し倒すと、シーツを被った。
その後、蜜柑のことが気になり、棗が部屋を訪れたのはもう少し後のこと。さらにその後、棗と陽一の仲が険悪になったとかならなかったかは、まだまだ先の話。最後に”浮気になったか、ならなかった”のかは、それはやっぱり棗次第。




UWAKI

(年下の彼と遊んでみませんか?)




黒いよーちゃん好物なんですよ私。っていうか成長したよーちゃんってこんなにも喋るのだろうか?よくわからん。ってか最後二人はどこまでいったの?棗くんはどこまでいった時点で来てくれた(助けにきてくれた)の?それはご想像。
でも多分棗とよーちゃんが険悪なムードになったりは多分ないと思います。よーちゃんは棗に見つかるようなヘマする子じゃないと思うから棗が来たって気配感じたら多分窓からでも飛び降りて逃げると思います。それか新しく手に入れたアリスで小さいよーちゃんになって普通にそこにいると思います。蜜柑もよーちゃんに何されたとか多分言えないと思うんで。
うわー!よーかん萌えるね!(勝手な妄想で萌えるな)