眩しい笑顔とか、活発で自然体なところに自然と惹かれていた。自身を気にとめてくれていた棗君も大好きだったが、彼女に対しては別の好きだった。
近づきたくて、話したくて堪らない。だから彼女が一人の時をついて、自身は上の学年にいる彼女のところに向かった。今日は幸い、彼はいないようだ。
「…わっ!よーちゃ…っ陽一か!棗かと思ったわ」
何も言わず彼女がいる教室に入っていくと、彼女が吃驚したようにそう言った。彼女が『陽一』と呼ぶのは、以前に自身が彼女に『もうあの頃とは違うんだから』と言ってお願いしたからだ。
彼女が名前で呼んでくれるのは嬉しかったが、彼だと勘違いされたことについては正直胸がずきんと痛んで、ショックだった。
「何で、にーちゃんだと思ったの?」
「えっ…そ、それは…!」
辛い、という感情を押し殺して、面白そうに演じて問うてみた。彼女が彼のことを好きなんて、とうに気づいてる。自身と話すときだって、必ずと言って良いほど彼の話が出るのだ。
彼のことは昔から好きだし、一番信頼できる人だけれど、彼女が話す『彼』は、正直言って好きじゃなかった。必要以上の嫉妬心が胸に打ち寄せてくるのだ。
「…分かった。にーちゃんのことが好きなんだ?」
そう悪戯笑みを浮かべて言ってみると、素直に彼女の頬はみるみると赤くなっていった。
分かっている。こんなの予想していたことだ。
「…っっな、内緒やで!?まだ蛍にしか言ってないんやから!」
「分かってるよ」
素直に認めるとは思ってなかった。
ああ、やだやだ。まあ、慣れてるけどね。
「…ありがとう!よーちゃ…あっっ」
「まただ。陽一って呼べって言ったでしょ」
何回言っても直らないね、と付け足すと、彼女が『だってぇ』と頬を膨らませた。軽く目を潤ませている彼女が無性に可愛くて、何だか悪戯してみたくなってしまう。にやりと笑みを浮べ、そのまま彼女に顔を寄せると、彼女が敏感に肩を揺らした。
ーああ、これだから人はこんなにも卑怯なんだ。
「…罰だよ。僕にキスして?じゃなきゃ、さっき蜜柑が言ってたコトにーちゃんに言うからね」
半分、彼のことが好きな彼女への仕返しだった。好きな彼女が別の彼の話をするという屈辱、どれだけ辛いと思う?じりじりと彼女との距離を縮めていくと、彼女の頬が一層赤くなって、目を泳がせ混乱状態になった。さて、どうする気なんだろう。
「よっよよ…っよーちゃ…じゃない陽一!あんた何ふざけて…っっ」
「ふざけてなんかないよ。早くしないと本当に言っちゃうよ?」
「〜〜〜っっっ!!」
重なり合った影は、途端に差し込んだ夕日の光で見えなくなった。
「真っ赤だな…」
見上げた空の赤さに、思わず声が漏れた。先程別れた彼女の唇の温もりがまだ残っている。本当にしてくれるとは思わなかったけど、そんなに嬉しくはない。だって、求めている場所にはしてくれなかったから。
頬にいまだ残る微かな温もりに手を伸ばし、そっと目蓋を閉じた。
『さっき蜜柑が言ってたコト、にーちゃんに言うからね』
まあ、言う気なんてさらさら無かったのだけど。
悪戯と、淡いキス
(彼を想う彼女がキライ)
*
よーかん萌えすぎたんで勢いで…