(流架くんと蜜柑ちゃん)


教室で騒いでいる彼女の笑顔を見ていると癒された。笑ったり、泣いたり、怒ったり、ころころ変わる表情に飽きることはない。可愛らしくて、愛しくて、守ってあげたいと思った。然し彼女は自身の親友と付き合っていて、お互い喧嘩もするが本当はとても仲が良い。そして深く愛し合っている。所詮は叶わぬ恋。見ているだけで十分。彼女の笑顔を見るだけで満足だと思っていた。
彼女は、今では其の長い髪をふんわりと垂らしている。教室で大好きな親友を追いかけ、はしゃいでる彼女の笑顔と流れる髪に思わず見惚れた。だから彼女が誤まって自身にぶつかってきた時、心臓が止まるかと思った。
「わっごめん流架ぴょん!」
戸惑いながらも、転んでしまった彼女の腕を引いて起き上がらせてあげた。刹那、彼女の顔が間近に接近し、甘い香りが鼻をつついた。眩暈がしてしまう。
「…気を付けて、な」
「うんっありがとう!」
笑顔が眩しくて、何だか懐かしかった。思えば、彼女と親友が付き合い始めてからは、自身は無意識に身を引き、彼女とあまり話さなくなった。気を遣っていたのだ、自身はまだ彼女の事が好きだったから。
間近で見る愛らしい顔付きや、手に掛かるふんわりとした髪も全てが懐かしくて愛しかった。確か、前まではこの距離が当たり前だった。思わず彼女の腕を囲む手に力が入る。
「……るか…ぴょん…?」
「…あっっごめん!」
彼女の手をずっと掴みっぱなしだったのだ。少年が手を離すと、少女はまたにっこりと微笑み、『ありがとう』と言って走っていった。
其の後姿をぼうっと見送りながら、少年は温もりの残る其れをぎゅっと握り締めた。
ー本当はあのまま腕を引いて、抱きしめてしまいたかった。壊れるくらい抱きしめたかった。俺のことを好きになってよ、なんて…考えてはいけない感情までもが動いた。
『……るか…ぴょん…?』
あの時、声を掛けてくれて良かった。あのまま彼女が何も言わなかったら、無理矢理にでも自分のものにしていたかもしれないから。抱きしめて、抱きしめて、取り返しのつかないようなことを。
きっとその時は親友を裏切ったってことになる。
「あ〜あ……」
考えると、今でも震えが止まらない。




君を抱きしめたなら

(そこから先は進めない)




なんか私の書く流架蜜柑は暗いのばっかだな…;