(流架くんと蜜柑ちゃん)


ころころ変わる表情に飽きることはない。見ているだけで楽しくなって、心地良くなって、愛しくなる。その日溜りみたいな笑顔をずっと見ていたいと、思ってしまうくらいに。
少女はまだ自身の気持ちに気づいてはくれない。他の人間はとうに気づいているというのに。別に技と気づかせようとか、そう思っている訳ではないが、あまりにも鈍感すぎるから何だかちょっと気に喰わない。
『ルカぴょん可愛い!』
その言葉だって男に向かって言う言葉ではないと思う。男として意識されているのなら、絶対にそんな言葉言わない筈だ。そう考えれば考える程頭が痛くなる。
「ルカぴょん、何してんの?」
「…っっ!!!」
急に響いた声に、金髪の少年は思わずオーバーに肩を揺らしてしまった。野良犬を撫でていた手を止め、後ろを振り向くと、そこには悩みの種である少女が。少女は少年の許可なしに隣に座り込むと、一緒に野良犬の頭を撫で始めた。思いもしなかった少女の登場に、少年は顔を真っ赤にして口をぱくぱくとさせている。
すると野良犬が少女の頬を舐め始めた。少女も嬉しそうな顔をして、野良犬をぎゅっと抱き締めた。
「…その犬、佐倉のことが好きみたいだね」
「ほんまに?嬉しいなあ」
そう言ってやると、少女は顔を綻ばせた。その光景を少年は穏やかに見詰めていた。しかしその顔はすぐに何かを思い出したような険しい顔に異変した。
ちょっと待て。
今は告白すべき時なんじゃないか?
普段、全く二人きりになれる機会がないのだ。何時も少女の近くには大勢の生徒や、親友の姿があるからだ。それにここは裏庭。簡単に誰かに見られる心配はない。
『…その犬、佐倉のことが好きみたいだね』
ー付け足すように"俺も"と言えば済むことだ。
「…あの、佐倉……」
少女は野良犬から目線を少年へと戻すと、にっこりと『何?』と問うた。しかし少年はその次の言葉が言えず、黙り込んでしまった。小さな耳は真っ赤に熱を溜める一方である。
「その…俺も…」
「おれも?」
何か面白いことでも聞けるんだろうか、と少女が必要以上に身を乗り出して見詰めてくる。しかしそれが少年にとってはプレッシャーとなり、余計に先を言えなくなる。
好きだ、それを言えば良いこと。だけどそれが思うように言葉に出来ない。それが言えなければ先ほどの犬と同じ気持ちだということを言えば良いのだが。でもそれさえも緊張して伝えることが出来ない。
そのまま先を言えないでいると、少女が何か思い出したような顔をした。
「そうや!今日ルカぴょんも放課後タイムカプセル作ろうや!」
思い出したらすぐさま口に出す、それが少女なのだから仕方がない。少年は今まで言おうとした言葉を全て呑み込むと、長い息を吐いた。
「…たいむ…かぷせる…?」
「うん!今日蛍たちと話してたんや!ルカぴょんも一緒に埋めよ!」

「それじゃあ誰が誰に手紙を書くかくじ引きで決めましょう」
あっという間に放課後となり、蜜柑と蛍、委員長、野之子ちゃんなどのメンバーが教室に集まった。そして何時の間にか皆の提案で友達同士で互いに手紙を書くことに決定し、くじ引きを作り、それぞれ結果が出た。
「あたしは…委員長ね」
「えっ心読み!?流架くんが良かったあ〜〜っっ!!」
「あはは、僕は流架くんにだぁ〜」
「やったあ!!蛍やああ〜〜っっ!」
そして最後に箱から紙を取った金髪の少年の結果も。少年はそっと四つ折りの紙を開くと、何も言わずにそれを閉じた。

無事手紙を全員書き終えると、大きなクッキーの缶にそれを入れた。その中には皆の手紙と、その他には大切にした人形や、アクセサリーなども入っていた。
学園で一番大きな木の下をシャベルで掘り起こし、ゆっくりと皆で缶を埋めた。その時の皆の表情ときたら、どれもとても楽しそうで。
埋め終わると、皆で手を繋いで寮に帰った。

ー再びその缶を開けるのは、十年後。

「なあルカぴょん。手紙なんて書いた?って聞いたらあかんよね」
帰り道、部屋が同じ方向の為二人きりになった少女が少年に面白そうに問うてきた。その問いに少年は微笑みながら夜空を見上げた。
「うん、まだ内緒だよ」
きらきらと輝く星達が優しく自分達を照らしている。
この夜空は、十年後の僕達をもう知っているんだろうか。

「…そういえば、ルカぴょん誰に書いたん?」
ー未来の自身は彼女に想いを告げられているだろうか。
それを知るのはまだ先で良い。
今はとりあえず…


『佐倉蜜柑さま』

それを読んだ君はどんな顔をするだろう。
物凄く驚いた顔をするのかな。
それとももうそれを知っているのかな。

ーでも、この頃の僕はそれが言いたくて堪らなかったんだ。






『−僕は、あなたのことが大好きです。』

全ては、すべては、
十年後の君が知っている。




十年後の君へ

(未来の僕のトナリに君がいたら、と)




実写版のちびまるこちゃんでタイムカプセルの話がやってたんで作ってみた。
何だか詩でごまかされた部分が多いような…。
それにタイムカプセルの話にしてはそこまでいく話が簡単すぎたかも。
るかんは結構可愛い話が合いますね。ってかいつも流架の片想いでごめんなさい;