(鏡夜くんと環くん)


肩に手をゆっくりと滑らせ、引き寄せるように力を加える。半開きのそこに触れるのは思ったよりも容易いもので、自身は優しく唇を重ねた。微かに歯がぶつかり合い、そっとそれを離す。
驚いた様子もなく、彼は長い指先でずれた眼鏡を掛け直すと、落ち着いて問う。
「…何故だ?」
何故キスをしたのか、そう問うている。問われた青年は特に焦ることもなく、ぼうっとした面持で空を仰いだ。見上げた青に雲はない。といって日差しが強い訳でもない。ただぼわんとした薄い青が広がっている。何だか今の気持ちに似ている。
「…なんでだろ……」
理由などなかった。"背広が乱れている"と言って急に黒髪が頬をこそばゆくさせ、首元に腕を回すから、そのまま肩を引き寄せてキスをした。その時の気持ちなんてよく分からない。ただ妙に血が騒いで、変な気分になったのだ。
今だってその気分が続いている。何故だか自身は、また彼の肩にゆっくりと手を回すと、唇を重ねた。今度は触れるだけのキスではなく、紅に絡み合わせて吸い付くようにそれを奪った。
最中、微かに覗き見た黒髪の瞳は少し笑っているように見え、自身は直ぐにこれが"計算"だったのだと理解した。




fascinate

(計算された魅惑)




題名が考え付かなかった…。
さりげなく環を魅了する鏡夜…。
まだまだ勉強不足です。
空の詳細を持ち上げるなら
最後にもっと空が関係してこなきゃいけないのに…。