(環せんぱいと1年生ズ)


「この三人の中でさ、最もハルヒと親しい仲になれたのって誰だと思う?」
おバカな部長遊びを一旦停止し、双子の受けの方が行き成りそう言うと、途端に三人の空気が一気に静まった。そしてこの一言が、後にややこしいことに発展するのである。
そういえばそうだ。今まで彼女を巡ってをゲームしたり、事件等が多々あったけれど、どれも自分達の一方的な気持ちを突き通しているだけで、彼女と自分達の距離感なんて全く考えていなかった。ー自分達は彼女とどれだけ距離を縮められただろう?
「…やはり!部長である俺がハルヒと一番距離を縮めているのではないか!?最初にハルヒの素顔を見たのは俺だし…っそれにハルヒだって俺に大分慣れているような気が…っっ!」
「「いや。やっぱり授業中も休み時間も部活中もハルヒと一緒にいるクラスメイトの僕らでしょ」」
「…っは!!」
「殿がハルヒといられるのは部活中だけな訳だし?」
「どっちかっていうと呆れられてる訳だし?」
「うっっ!!!」
まあ普通に考えてみればそうだろう。おバカな部長が彼女と一緒にいられる時間より、クラスメイトである双子の方が彼女と過ごせる時間が長いのだ。彼女と親近を深めるチャンスは部長より遥かに多いだろう。
だが彼女が部長に慣れているのは確かな事だ。しかしそれは慣れているというよりは呆れられていると言った方が正しいのかもしれない。まあもっと優しく言い換えるのならば、"扱いに慣れている"というくらいだろうか。
だが、彼にはまだ秘策があったのだ。
「…ふふふ。聞いて驚くなよ。俺はなあっ…ハルヒと間接キスをしたことがあるのだ!!」
そう自信満々に叫んだおバカな部長の頭に浮んでいるのは、何時かのパーティーの日。彼女の使ったフォークで彼女のお奨めの高級ディナーを食べさせてもらったことがあるのだ。その時の間接キスがそれはもう彼にとっては最高の出来事だったのだ。
"間接"という単語が付いているのは気にしないとして、キスという単語は恐らく結構なポイントになるだろう。
しかし、おバカな部長が有利のままこの話が終わる筈がないのだ。
「「何言ってんの殿。僕達だってそんなのしょっちゅうしてるよ」」
そう淡々と言ってのけた双子の言葉は余裕さえも感じられ、その言葉は当たり前のようにおバカな部長に衝撃を与えた。その時のおバカな部長ときたら、それはもう驚きを超えて魂が抜けたような顔をしていた。
「ハルヒの飲みかけ勝手に飲んだりしてるし〜」
「逆に僕らが飲みかけをあげたりもするしねえ?」
「…っな…なななな…っっっ!!」
「「なんたって僕ら、クラスメイトだし?」」
予想外の事実。自分だけだと思っていた彼女との間接キスは、やはりクラスメイトである双子も経験済だったのだ。その瞬間に勝手に空想の中で作り出されていた"ハルヒとの親近状態表"は、ぐんと双子のメータが上がり、同時におバカな部長のメーターはぐんと下がったという。
「おおお前らああ!!可愛い娘の飲みかけを軽々しく飲んでいるとは何事だああ!!それもしょっちゅうだとお!!?ふざけるな!!!」
「「殿、大事にとらえすぎだよ。たかが間接キスでしょ?」」
「たかがとは何だたかがとは!!まあいい!お前らの間接キスは俺の時とは格が違うのだ!ハルヒはつい先程使っていたフォークで自ら俺に食べさせてくれたのだぞ!?」
しかしそんな台詞をこのタイミングで叫んでしまったのが悪かったのだ。しかも部室中に響くような大声で。閉店近いのに未だ残っていた客や、客の相手をしていた他の部員達は勿論、遅れて今まさに部室に入ってきた噂の彼女にもそれは丸聞こえで。
一気に部室の中がしんと静まったのが分かった。そして、その空気の中で定番のように双子が吹き出し、何時ものようにげらげらと笑い出す。恐る恐る振り向いたおバカな部長の目に映ったのは、何ともいえない黒いオーラを漂わせたその彼女だった。
「……何の話をしているんですか?」
「…っいや!その…っっっ」
そう慌てておバカな部長は双子に目線を向けて助けを求めるが、小悪魔的存在の双子が彼に加勢する訳がないのだ。双子はお互い目を合わせてにやりと笑い合うと、彼女に技とらしくこう言った。
「「聞いてよハルヒ〜。殿がハルヒと間接キスしたことを自慢気に話すんだ〜!僕らはそんなの"悪趣味"だからやめろって何度も言ったのに〜」」
「なっ…!!」
まさに火に油を注ぐというやつである。
無論、さすがのハルヒも怒らずにはいられないだろう。
「…へえ。間接キス…。先輩そんなの自慢してたんですかあ。っていうかそんな細かい事覚えてたんですね」
「は、ハルヒ…!断じて俺は疾しい気持ちでそう言ったのではなくて…っっっ」
「前から思ってましたけど、やっぱり先輩ってそういう人だったんですね」
そう冷たく言い放つと、彼女は彼の前を静かに去っていった。その瞬間から彼女の彼へ対しての"慣れている"という文字は"失望"へと異変するのである。双子は相変わらず爆笑していて、おバカな部長はショックのあまり消えかけたとか。




彼は最後まで

pitiable


(賑やかなある日)




おまけ
「え〜っでもたかし2巻でハルちゃんと間接チューしてたよねぇ?」
「……………(こくり)」
「あ〜そういえばそうですね。自分が飲みかけのジュース渡したんでしたっけ」
「「「ええぇぇえ!!!!??」」」
実は随分前に思わぬ人物に先を越されていた環たちであった。
――――――
初のギャグ。双子と環の絡みも好きです。
台詞多いと面倒臭いことになるので
鏡夜とかの出番はなしになってしまいました;
ってかpitiableって単語こういう使い方で合ってるかな?;