彼の口からよく出てくる言葉といえば”メリット”。それは彼曰く部員たちを繋いでいる糸でもある。彼はメリットのあるものを自らに導き、そうでないものには全く興味を示さなかった。それは金持ち独自の考え方なのか。いやしかし、彼は誰よりもメリットへの執着心が強かった。
そんな青年の人柄を、ハルヒはぼんやりと再認識しながら呟く。
「…鏡夜先輩がメリット無しの関係を好むようになったら、ある意味恐ろしいですよね」
部員達の関係はメリットで繋がれていると青年は言っていたが、ハルヒは勿論それだけで繋がっている薄っぺらい絆ではないと何となく分かってはいた。しかしハルヒは考えた。彼が寧ろメリット(関係)無しの関係を好んだらある意味恐ろしいものだと。というか、想像がつかない。そう思ってしまうのは、メリットに拘る今の彼があるから余計なのであろうか。
「……喧嘩を売っているのかお前は」
「いえ。そういう訳では」
カランとグラスの中の氷が音をたて、薄く透き通るアイスコーヒーが青年の喉を滑っていく。それから部室の大きな窓から空を仰いだ青年の表情は、少し笑っていた。真面目な顔で毎度変な発言をするハルヒが可笑しく思えてくるのだ。
「メリット無しの関係ねえ…例えばなんだ?」
ソファに礼儀正しく座っているハルヒは、そう問われると”そうですねえ…”と小さく言いながら何時ものようにグーの手を口元に寄せた。そうやって真面目に考えるあたりも何だか可笑しく、青年の中でクククと笑いが込み上げてくる。そんな青年に気づかずに、ハルヒは今考えたことをゆっくりと話し出した。
「えっと例えば、鏡夜先輩が庶民にニコニコ親切にしてたら普通にビビります」
”普通言いづらいことを遠慮なくズバズバ言う奴だな”そう思いながらも、その言葉に自然とまた笑みが零れる。その度胸と天然さを、まあ気に入ってはいるから。
「あ。あと……」
何かまた思いついたのか大きな黒目が上に移動する。そして思いついた言葉はまたハルヒの口から流れていく。
「”一番驚くのは”やっぱり鏡夜先輩が庶民の女の子に興味を持ったら、ですかね」
”偶然道端で会った庶民の女の子に恋…なんちゃって”そう付け足すとハルヒは面白そうに笑った。しかし、その瞬間今までとは違う空気が走る。無音の中をゆっくりと細長い腕が伸び、開いた掌でぱしりと細い手首を掴んだ。行き成りのことに思わずソファの背もたれに押っ掛かる。
「…好むまではいかないが、俺はお前との関係を気に入ってはいるが?」
”メリット無しのこの関係を。”そう言っているような言葉で、青年はハルヒに囁いた。ハルヒはあまり意味が理解できていないらしく、ただ”え?”と言いながら目を白黒させている。
「ああ、それと…」
そう付け足すように言うと、青年は握っているハルヒの手をゆっくりと持ち上げ、その手の甲に軽くキスを落とした。
『一番驚くのは”やっぱり鏡夜先輩が庶民の――――…』
唇を離し、優しく手も解いてやると、青年はさらにコホンと喉を鳴らす。
「いや。この先は言う必要ないか。…なに。ハルヒが”一番驚くこと”だよ」
そう言って青年は何時ものような悪戯笑みで笑う。ハルヒはまだ意味が理解できずぼんやりとしていたが、後々自分が彼に言っていたことを順に辿っていき、”ああ、この人ったら私に恋してるのね”なんて鈍感なハルヒが気づく筈もない。
メリット無しの恋、
現在進行中
(君とならきっと、)
*
桜花さんに相互記念としてお送りしました。ちょっと良い感じの鏡ハル…ということで、大分考えたのですが結局こんなものしか出来ず…桜花さんスミマセン(汗)メリットなし=価値なし…とかそういう訳ではなくて、メリットがどうのこうの考えない関係…と解釈して頂ければ幸い…です。ああ!でも前にハルヒが「鏡夜先輩にとってメリットって何ですか?」って聞いてて鏡夜にとってメリットというのはそこらの薄っぺらいメリットではない訳であって…っっ!あってかハルヒは恋がどうこう言う子じゃない!ああああ!よくわからん!!
…まあ、ただの「鏡夜がメリット関係なく庶民のハルヒに惚れている」って話です。なんか鏡ハルは同じような話しか書けないな…ウーンもっと勉強せねば。ってか出てくるの二人だけって…部員どうしたの?まあ気にせずに。改めて桜花さん相互有難う御座いました!v