珍しく降った雪の中を六人の男女が走り回っている。部長が『庶民の遊び”雪合戦”とやらをしようじゃないか!』と叫んだのがきっかけだ。無論、庶民代表のハルヒが無理矢理雪遊びの中心人物とされている訳で。
「ハルヒ!これをどうするんだ!?ひたすら投げていれば良いの…っぐわぁあ!!」
「「ギャハハハ!殿の間抜け〜!悔しかったらぶつけてみな〜!!」」
「っっくそぉお!!待てこのドッペルゲンガーズめがぁああーー!!」
(一々説明しなくても良さそうだな…)
夢中に雪合戦をする部員達の中でハルヒはあまり乗り気ではなかった。まあこの歳になってまで楽しく雪合戦をするとは思ってもいなかったし。
しかし、それ以上に乗り気ではない人物がもう一人。そう、真面目そうな眼鏡がトレードマークの副部長だ。首にはしっかりとサンドベージュのマフラーが巻かれていて、ちゃっかり厚めのコートまで羽織っている。さらに腕を組み、しれっとした表情で遠くの方で突っ立っている。その様子はどう見ても”無関心”。それしかなかった。
そんな青年の姿をぼうっと眺めていたハルヒにハニーは気づくとこう言った。
「キョーちゃん参加しないんだってぇ。手が冷たくなるのがイヤみたいだよ?」
「…はあ。それは自分も嫌ですが」
「あっハルちゃん!タマちゃんが呼んでるよぉ。行っておいで〜」
「…はい…」
それでも、腕を組んでいる人物のことが何故か視界から離れず、ハルヒはその姿をぼうっと見詰めながら思っていた。”この雪遊びは予想以上に長く続くだろうから、きっとあの人はそれまで退屈してしまうだろう”と。
暫く経ち、両手一杯の雪の塊を何も言わずにそっと眼鏡の青年の隣に置いた。青年はその様子を横目でじっと見詰めると、小さく口を開いた。
「…何だ、それは」
青年の隣に置かれたのは、不恰好な小さな雪だるま。葉っぱなどで顔が作られてはいるが、さすがハルヒ作とあって目の位置も鼻の位置も全てがバラバラだった。そんな雪だるまをしっかりと地面に立たせてやりながら、ハルヒが屈んだ状態で答えた。
「さっき環先輩に無理矢理作らされた雪だるまです。鏡夜先輩一人じゃ寂しいと思うので、とりあえずここに置いておきますね」
一人より、誰かいた方が良いでしょう?そう続ける彼女に、青年は少し黙り込むと、それからフッと笑みを溢した。
「…お前は、環みたいなことをするんだな」
「そうですね。環先輩の性格が少し伝染ったかもしれませんね」
途端、遠くからまた『ハルヒー!』と叫ぶ環の声が響く。ハルヒはうんざりしたように一つ息を吐くと、ぱたぱたと雪のついた手を両手ではらい、腰を上げてから”それじゃあ”と言って環達の元へと戻っていった。
小さくなっていく後姿を雪だるまと重ね合わせ、青年はその二つの存在をぼんやりと見詰めると、静かに笑った。
「…全くお前は、面白いね」
「ね〜鏡夜先輩。何このブッサイクな雪だるま」
翌日、部室の巨大冷凍庫を開け、双子の受けの方が悪気もなくそう言った。その言葉を聞き、後から冷凍庫を覗いた攻めの方は”キモい!”を連呼し大笑い。
そう、冷凍庫の中にはしっかりとあの時の雪だるまが歪んだ笑顔を見せて佇んでいた。双子の声で何気なく冷凍庫の中の雪だるまを見たハルヒも”あっ”と声を漏らした。問われた青年は眼鏡を掛け直すと、軽い笑みを見せ、こう言う。
「近くにあったんでね、せっかくだから記念に取っておくことにしたんだよ」
「え〜っ鏡夜先輩興味ないって言ってたじゃん!」
「どういう心境の変化〜??」
「まあ、色々とね」
そう青年が一言で片付けると、双子達は飽きたのかお客のところへ戻っていった。それから青年も静かに冷凍庫を閉め、同じように接客に戻ろうとした。しかしハルヒが青年の制服の裾を軽く引っ張ったことでそれは止められてしまう。
「…素手で、運んでくれたんですか?」
ぱちくりとした大きな瞳で見上げ、彼女はそう問うた。青年は何事もなかったような表情で何時ものようにメモを開くとこう答える。
「な訳ないだろう。お前が雪の上に放置していたコートを使って運んだんだ。手を汚したくはないからね」
「……ああ、どうりで何か濡れてると思いました…」
さすが副部長。やはり素手で持つなんてことはしてくれないか。
しかし、こうやってあの時作った雪だるまが冷凍庫の中で生きているのは事実。あのまま溶けることもなく、今もこうして不器用に笑い続けている。それはこの人が柄にもなく自分自身の手を使って運んでくれたから。それを想像すると、何だか可笑しくて笑えてくる。だけど一つ気になることがある。それは、
「でも、何で態々そんなことしてくれたんですか?」
再び客の元へと戻ろうとする後姿にそう問うと、後ろ姿が足をピタリと止めた。自分が作った雪だるまを彼が冷凍庫に移してくれたこと、それはとても嬉しいことだった。けれど、何故彼はそこまでしてくれたのだろうか?青年はゆっくりと振り返り、不気味に微笑むとこう返した。
「さあ。興味が沸いたからじゃないのか?」
途端、”えっ雪にですか?”と再び質問が飛ぶ。青年は何も答えず、そのまま接客へと戻っていった。
雪から始まる恋も
悪くない
(なぜか大切に思えて、)
*
なんか簡単に話が進みすぎたような気がする。ハルヒが鏡夜の隣に雪だるまを置くシーンをもう少し長くすれば良かった。
「さあ。興味が沸いたからじゃないのか?」さて何に興味が沸いたんでしょうかね。雪にですかね?それとも…。まあこれで始まった訳じゃなくて、これを機に一層恋心が燃えた…みたいな(あ、言っちゃったよ)
鏡ハル大好きなんですけど私にとって鏡ハルって難しいんであんまり小説書いたことなかったんですが今回は頑張って書いてみました。鏡ハルも増やしたいものね…。
やっぱり難しかったので、思うようにスムーズに文書くことができなかったです;鏡夜って難しいんだよなあ。どうラブラブにもってけば良いのか分からないし。