彼女は言う。好きなものを遠慮し、何でも光に譲ってしまうのはよくないと。さらにそれは光にとっても嬉しいことでも何でもないのだと。
彼女は何もかもお見通しだった。僕が当然のことのように行なっていた”我慢”も、彼女は簡単に見破ってしまったのだ。唯一光と違う部分を彼女は、その真っ直ぐな心で、あっさりと。
「馨、何してるの?」
「…ああ、ハルヒか」
光は何時も平等だった。僕に対して変に気を遣うこともなく、例えば一つしかない林檎を、二人で平等に分け合う。食べて良いよ、等とは絶対に言わない。きっちりと、そう全てが僕との半分こだ。勿論、彼女のことも、光は僕とで半分こする。
でも僕はそんな光とは違った。少しでも光に喜んでもらいたいから、自分の分は我慢して、光に出来るだけ譲ろうとする。それで良かったのだ。それで十分だと思った。
だけど。
『光はそういうの、喜ばないと思うけどな』
分かっている。分かっているのだけど。
…本当は、最初から何もかもが違ったのだ。僕は光に喜んでもらいたいから我慢をして譲っている、という訳ではなくて。光に譲ることで嬉しくなるとか、十分だとか、そう思っている訳でもなくて。本当はどれにも当てはまらない。
ー本当は、最初からそれしか出来ないのだ。望んでいる訳ではなくて、ただ只管にそれしか。譲ることしか出来ない、それしか出来る訳がなかった。
だけど、僕に”それをやめろ”ということは、きっと、それは…
「ハルヒ!」
「…わっ」
僕は彼女の細い腕を強引に引っ張って、がむしゃらに走った。僕の中の何かが音を立てて、無意識にそうさせたのだ。行き先など決まっていない。ただ僕は、後ろで混乱している彼女の手を引いて、よく知らない住宅街の中を無我夢中に走りぬけた。だけどその時の住宅街は、僕にとっては色鮮やかな未知の世界だった。
僕が”それ”をやめた時、きっとその時、僕は彼女を攫って自分だけのものにしてしまうかもしれない。今までそれをしてはいけないと思ってきたから、だから僕は今まで我慢をして何もかも譲ってきた。僕の中での選択は、譲るか、全て貰ってしまうか、その二つだけ。そう、僕はどちらかしか出来ない人間なのだ。
譲る、をやめた時の
もう一方
(さあ、どちらを選ぶ?)
*
LaLa2006/12号、軽くネタバレごめんなさい;
さいっっっこうに12号のホストには萌えまくったので妄想で書いてしまいました。
半分この光に対して、馨は譲るか全部貰うかのどちらかしかできないと。
全部貰うのは当然いけないことだから、だから譲ることをしていたと。
完全妄想です。実際こうだったらびっくりしますよ(ありえません)
ってか二人どこにいるんだよ。まあそんなことは気にせずに。
2006/12/14 天野ミズトさまがこの小説をイメージした漫画を描いて下さいました。