最初に話した時も、彼はおせっかいだった。闇に埋もれた僕に恐れを感じる事もなく、何事も無かったような顔をして近づいてきた。そんな彼の行動が、僕にとっては息苦しくて、とても怖かったというのに。
学園に入学したての時の僕の心は空っぽだった。何もかもが馬鹿馬鹿しい。この学園にいる生徒も、教師も、入学が少し早かったというだけで変に威張ってくる同級生も。
だから自分から心をクローズさせて、人が近づけないような空間を作った。人に関われば関わる程、特別な感情を抱き、裏切られたときに自分が後悔するのだ。そんな感覚が昔から強くて、人を信じること、相手に心を開くことはしなかった。
「…君らみたいな人、嫌いだから」
そう理由のない言葉を言ってみれば、誰もが僕から離れていった。
それで良かった。それで楽だったのだ。
『てめぇ見てるとムカつくんだよ!』
先程殴られたところがまだ痛い。関わるなと言っているのに関わってきて勝手に怒る馬鹿のせいで気分は最悪だ。そんな思いをするのなら、最初から関わらなければ良いのに。人間ってつくづく馬鹿な生き物だと思う。頬が腫れ上がってずきんと痛む。これだから暴力は嫌なんだ。
ぼうっと廊下をふらついていたら、誰かとぶつかったような気がした。けど、そんな事を気にしているのが面倒で、そのまま相手の顔も見ずに足を進めた。
刹那、ぐんっと後ろに背中を引かれ、吃驚して思わず持っていた本を落としそうになった。
「お前、ぶつかった時はちゃんと謝れよ」
そこにいたのは眉を吊り上げた同い年くらいの少年だった。掴まれた肩を離してはくれない。何気なく下に目線を落とせば、そこには小さな植木が落ちていた。植木は真っ二つに割れていて、中からは生きた変な花が泣いていた。どうやら目の前の少年が持っていたもので、先程のぶつかった拍子で植木が落ちてしまったらしい。
けど全てが面倒で、謝らずにそのまま黙っていた。まだ少年は肩を掴んだまま『聞いているのか』としつこく問うてくる。好い加減、苛々してきた。
「…細かい。煩い。あんたみたいなのが一番大嫌いだ」
「はっ!?」
「僕に構うな」
冷たくそれだけ言い放ち、肩に置かれた手を強引に離してまた歩き出した。彼は怒ったような表情をしていたし、もう僕には構わないだろう。そう思い、また自分の世界に戻った。しかし、彼は可笑しかった。
「…頬、ちゃんと冷やしておいた方がいいぞ」
吃驚してもう一度彼の方に振り向くと、彼は落ちた植木の破片を拾いながら何事もなかったような表情でこちらを見ていた。
「そういうのは治りが遅くなるからな」
「…………………」
そのまま無視して歩いた。先程のことなどリセットして、そのまま忘れようと思っていた。
しかし、それが出来なかった。今まで作り上げた積み木を一気に壊されたような感覚だった。よく分からない熱いものが、胸の中に込み上げる。
「……優しいのは、もっと嫌いだ…」
何かが大きく音を立てた。
揺らぐ視界に映る道
(そのとき光が見えたんだ)
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最近、鳴海+岬にはまってますv鳴海の過去は完全オリジナル