「あたしが認める、」 |
「どうして誰とも付き合わないの?」
モテるのに、とクラスメイトの女子は付け足した。最近流帆はそれをよく問われるようになった。まあ実際流帆が異性からモテているのは確かだ。先輩、後輩、同年代を限らず、様々な人が流帆の美貌とその凍るような透き通る瞳に心を奪われている。週に四回のペースで告白を受けるくらいだ。
しかし流帆は告白を全て断ってきた。どんなに金持ちで美形の人であれども。金に目がない流帆にとっては好都合のように思えるのだが。
「もしかして、好きな人がいるの?」
「そんなのいないから」
もう一人の女子の問いを、流帆は迷わずに否定した。そんな流帆の様子に理解できず、女子達は揃って首を傾げた。すると流帆は長い息を吐き、席から立ち上がった。
「興味がない。それだけだよ」
そう言うと、流帆は教室を出た。
「あ、流帆ちゃん」
職員室の戸をがらりと開けると、すぐに泣きぼくろの教師が声をかけてきた。鳴海という名の男は未だ教師を続けており、蜜柑達の担任を続けていた時から大分経ったものの、その若さはあまり変わっていない。
ゆっくりと職員室の中に足を進めると、鳴海がにっこりと微笑んである場所を指差した。そこには流帆が探しに来た人物が鳴海の席で静かに寝ていた。
「話し疲れて寝ちゃったんだ」
その様子に流帆は驚かなかった。それが何時もの事だからだ。そしてそんな葵を迎えに行くのも何時もの事。葵は鳴海を慕っているらしく、たまに職員室に遊びに行くのだ。鳴海を慕うのは、母親譲りなのだろうか。
「ごめん。これから会議だから、流帆ちゃん葵君のことよろしくね」
「はい、わかりました」
そう慌しく言うと、鳴海は職員室から出て行った。職員室は流帆と葵だけになった。流帆は静かに葵のところまで行くと、軽く背中をさすった。
「…この馬鹿。起きろ」
「ん〜〜…あと五分……」
「寝ぼけてんじゃないの」
そう言って流帆は、机にしがみ付く葵の手に手を伸ばした。しかし急に流帆の冷たい手は暖かな体温に包まれ、強く握られてしまった。思いもしなかったことに、流帆は頬を赤らめて反射的に手を引っ込めようとした。しかし手を囲む力は強く、離れない。
流帆の頬はさらに熱くなっていく。流帆は葵から積極的にされると、必要以上に照れてしまうのだ。それは唯一父に似た部分である。
『どうして誰とも付き合わないの?』
急に浮んできたのは先ほどの女子の問いで。本当はもっとちゃんとした理由がある。興味がないからという簡単な理由ではない。自身には心に決めた思いがあるのだ。
藍の髪に静かに指を絡ませると、髪はさらさらと指から流れるように落ちていった。その髪にそっと唇を寄せ、口付ける。さらに唇を耳元に滑らせると、流帆は囁くように言った。
「あたしが認める男は、あんただけだから。」
END
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中等部くらいの二人…かな。まあ初等部でもどっちでも良いんだけど。
基本的に積極的にするのは流帆ちゃんの方です。
けど時々葵が大胆になると流帆ちゃんは照れてしまいます。
いつもみたいな葵のテンションで抱きつかれるのは照れないんだけどね。
今回みたいな寝てるときにいきなり手を握られたりとかは照れちゃうんです。
意味わかんないのでここまで。