give up!
降参したい時はそう言う。







g i v e u p !




「悪いけど、棗君と蜜柑ちゃん。
このプリント、資料室に置いてきてくれないかな?二人で」


笑顔の鳴海がずしんと二人の掌に置いたのは大量のプリントの束。
何故か『二人で』の部分が強調されたその言葉に蜜柑は大きく眉を吊り上げた。


「え〜っ、何で棗と行かなあかんのぉ?」

「パートナーだからぁ」


デザインにこった派手なブラウンのコートを羽織った鳴海がにっこり笑って言う。
今日も、その金のウェーブ髪はきらきらと輝いていた。


「俺だってこんなアホと二人だなんて御免だぜ」


横で『それ誰の事?』と苦い表情をするツインの少女を横目で見下して棗もそう言う。
だが、そう言った棗の横に、すすすと鳴海はにこやかに近づくと棗の耳元に唇を近づけた。そして、ぼそりとこう言う。


「本当は嬉しいくせにっ」


その瞬間、ブラウンの鳴海のコートが勢い良く火で燃え上がったのは言うまでもない。




棗の『行くぞっ』という言葉と同時に渋々、プリントを持ちながら資料室に向かった二人の後姿を見ながら、鳴海はまた懲りずに『襲っちゃってもいいからね〜』とにこやかにそう言った。
その後、再度、大きく鳴海のコートが燃え上がったのはさらに言うまでもない。


「このコート高かったんだからね〜〜〜っ」


最後にそう叫んだ鳴海の声は聞こえているのか、いないのか。






どさっ

二人は同時に資料室の机の上にプリントを置いた。
それと同時に、やっと終わった、というように蜜柑は大きな息を吐いた。

だが、その瞬間。


「うわっ、ハートパンツっ」


ぴらんっという音と共に響いたのは低い声音。
棗が、気を抜いた蜜柑の後ろに回りこんで、スカートを捲ったのだ。
何時もの水玉や、くま柄とは違う、今日は少しだけ大人っぽいハート柄のパンツ。


「な、なつめ!!何すんねん阿呆!!」


顔を真っ赤にしながら怒鳴る少女。
そんな少女を見下して怪しい笑みを見せる黒髪の少年。


「随分と成長したもんだな。もしかして俺に見られる為?」

「ちゃう!!そんな訳ないやん!!」


暗い資料室で影に覆われた少年の笑む顔は少し不気味で恐かった。
そんな怪しい少年に焦りながらも蜜柑は睨みつけて対抗した。

此処は資料室。
がやがやとした教室とは大分離れており、隣の部屋も使われていない部屋が多く、完璧に密室。それも大きな声を出しても教室が近くにない為か、全く聞こえないのだ。そんな事を考えて、蜜柑は少し焦り、警戒した。



「何、その顔。何されるかって焦ってんの?」


如何やら、警戒した顔は、棗の悪戯に火をつける逆効果であったらしい。
此の侭では危ない、そう思った蜜柑は思い切り棗の胸を押して、資料室のドアに近づけた。


「もう出よう!用は済んだやろ!?」


そんな焦る蜜柑を真近で見、棗は面白がるようににやりと笑む。


「何、プロレスか?」

「はっ!?出よう、ゆうてるやん!」


そう言うと、もっと焦り始めた蜜柑が面白くて、棗は強引に蜜柑の両肩を掴んで、後ろに押し戻した。
その瞬間に漏らした少女の間の抜けた声がまた面白かった。

がたんっとそのまま壁に押し付けてやると少女の頬が見る見るうちに桃色に変化していくのが分かって、物凄く可愛く思えた。

けど、思うように少女は雰囲気に応じてはくれず、自身の力を振り絞って無理矢理にその壁から離れようと自身の両肩を同じように押して、出口へと近づけていく。


「降参してぇならギブアップって言ってもいいんだぞ?」


にやり、と笑ってまた少年が壁へと少女を押す。
それに負けじと少女もまた少年を出口の方へと押す。


「だぁれがギブアップなんか言うか!!」


誰よりも負けず嫌いの少女は焦りながらも一生懸命対抗した。





ぎりり、という力を込めた押し合いは暫く続いた。


(…意外としぶてぇな……)

先程まで蜜柑に力を合わせて面白がっていた棗だが、押し合いが思った以上に続くので、棗はお遊びをやめて、ぐぐぐと簡単に蜜柑を壁に押し戻した。
さすが、男の子の力。本気を出した棗の力に蜜柑はびくとも出来ず、ただただ壁に押し付けられたままで居た。


「…ちょ、やめぇや棗っっ」

「いやだ」


そう真剣に言ったかと思うと、少年は、壁に押し付けられた少女の腰部分を両手で掴み、ひょいと持ち上げると、プリントの置いてある机の上に蜜柑を寝かせた。


ばさばさばさっ


置いた大量のプリントが落ちる音と共に、寝かされた蜜柑に顔を近づけると、棗はにやりと笑った。
まだ、両手は、蜜柑が動けないように両肩に置いてある。


「ちょ、ちょちょっ!な、なつめどいてや!!」


顔を真っ赤にさせて声をどもらせる蜜柑を面白そうに上から見下げながら棗はそのまま自身の唇を蜜柑の唇ぎりぎりに近づけさせる。

唇にかかる少女の息が心地良かった。


「降参したい時はギブアップ」

「…なっ!」


負けず嫌いな蜜柑にとって、降参する、とはとても嫌な事で、蜜柑は顔を真っ赤にしながらも最後の力を振り絞って棗の肩を一生懸命に押した。
ギブアップ、言う気はないようだ。

が、やはり男の子の力というものは圧倒的に強くて、蜜柑の押す力は無意味と化す。


「ギブアップ???」


焦る蜜柑を見下して棗が面白そうに聞いてくる。
そして、どんどん近づいてくる唇。

蜜柑はもう無理だと思い、決心した。


「…ぎ、ぎぶあっぷ!!!!」


そう思い切り叫ぶと、棗はあっさりと蜜柑の上から離れた。
その瞬間、差し込んだ窓からの光が物凄く心地良くて、安心して一気に息を吐いた。

だが。


がたん。


「………っん!」


息を吐いて気を抜いたその時だった。勢い良く降って来た力強い口付け。蜜柑は驚いて目をぱちくりとさせた。
その口付けは、とても強引で、どんどんっと肩を叩いてもびくともせず、角度を変えて何度も降ってくる。それも、口内では少年の生温かい舌が口内をしつこくかき回して気持ちが悪かった。


「…っぁ、な……つ、め…ッ」


とても激しく、襲ってくるそれに、ただ途切れ途切れ呼ぶ名前と、荒い息と、溢れ出てくる唾しか返せない。
その口付けは、やっと唇から離れたかと思うと、直ぐに首筋へと降りてきた。


「……ッ」


そして、思い切り歯を立てて、桃色のキスマークを落とす。
最後に、また自身の唇にちゅっと音を立てて口付けすると、それは終わった。


棗は何事もなかったように蜜柑を抱きしめるように机から下ろしてやると、蜜柑の手をとって資料室を出ようとした。
ぼーっとしていた蜜柑は、やっと意識を戻すと真っ赤な顔で棗に怒鳴りつけた。


「ぎ、ギブアップゆうたのに!何であんな事するん!?」


その言葉に、棗は、ゆっくりと振り向くと、にやりと笑った。


「お前が馬鹿みたいに可愛い行動するからだろーが。
あんなん俺がギブアップだっつーの」


ぼんっとおもちゃみたいに顔を真っ赤にさせた蜜柑を見、にやりと笑むと、棗は、蜜柑の手を強引に引きながら、資料室を出た。

そして最後に。


「あれだけだった事を有り難く思え」


そんな彼にギブアップな蜜柑だった。
お互い、相手には勝てないのだ。




おまけ。。。


鳴海「あれぇ?遅かったねぇ」
蜜柑「………………」
鳴海(蜜柑ちゃん顔真っ赤だよ…。
   本当に棗君蜜柑ちゃん襲っちゃったのかな。
   まあ、するとは思ってたけどね…。)

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memoでUPしちゃったんで読んじゃった人も居るかも…。
うーん、強引になってるかな?わかんないけどまあいいや。

今思った、中等部にもなってスカート捲りって……。