酔っていく君のひとつひとつの

声、表情、行動が僕の心を酔わせていく



僕 を 酔 わ せ た 真 犯 人



がやがやと、楽しそうな声が聞こえる。その声は、職員室から聞こえてくる、それに気づいた蜜柑は消灯直前、一人で職員室の前まで来た。周りは暗くて怖かったが、職員室からの灯があったのでそれを目指してここまで来れたのだ。

少し開いているドアの隙間からそっと覗く。そこには、大笑いしながら和気藹々とビールや、ジュースなどを飲む先生達の姿があった。どうやら、殆どの先生が酔っ払っているようだ。

「やっぱり月一回のこれに限りますねぇ!!」

そんなことを色んな先生が言いながら、また自分の持っているビールなどを飲み始める先生もいれば、机の上に広げられたツマミや、お菓子を食べ始める先生もいる。どうやら、こういった先生達だけの息抜きみたいなものが月一回行われるらしい。ただ、生徒達には内緒ということが痛いところである。

(生徒達は良い子に寝てるっちゅーに先生達だけずるいわ!)

そう思い、拗ねるように頬を膨らませた。暫く様子を覗いていると、先生達が体を起こした。何かと思い、目についたのは一人の先生が片手にもった花火が沢山入った袋。どうやら、これから花火をしにいくらしい。こちらに来ると思い、一度身を隠した蜜柑だが、先生達が別のドアから出ていったので、ほんの遊び心で先生達が先程まで居た部屋に入ることにした。

辺りを確認しながら、そっとドアを人が入れる分くらい開け、中に入ると、むぅんとしたお酒の匂いが鼻をつついた。蜜柑は、ひきつった顔をしながら鼻をつまむと、そのまま完全に入り、ドアを閉めた。

目的はやはりそれ。机の上に大量に置かれたビールや、ジュースだ。蜜柑は、その大量に置かれたジュース達を一度じーっと見つめると、適当に良さそうな缶を手にとった。缶をよく見ずに…。

蜜柑は、へへんと満足気に笑うと缶のフタを上手に開ける。開けた瞬間に漂ってきたとてつもなく甘い香りが頭をくらくらとさせた。そして、また再度辺りを確認すると、ごくりと息を呑み、勢いよく缶に口をつけた。つけた瞬間は、固く瞑っていた瞳が飲むにつれ輝かしい大きな瞳に変わってくる。

そして、ぷはぁっと満足気な音を出して、缶から口を離す。
出てきた言葉は……


「なんやこれ!!めっちゃ美味いやん!!」


どうやら、お気に召したらしい。蜜柑は、そのジュースの美味しさを知ると、またぐびぐびとそれを勢いよく飲み始めた。それは、度を越えて、とうとう4本目までになっていた。


















「…変な声が聞こえる……」

暗闇の中ぽつり。職員室から微かに聞こえてくる変な声に目を覚ましたのは、黒髪の少年。普通の子なら、微かな声なら気にも止めないが、彼は違った。勢いよくベッドから飛び降り、ドアを開け、変な声が聞こえてくる同じ階の職員室に足を進めた。

寝着のジーパンに両手をすっぽりと埋めると暗闇の中、灯がともる職員室に向かう。近づくたびにはっきりしてくるその声に棗は、少し理解した。

(…なんだ…?関西弁………?)

その答えは、正解だった。職員室のドアの隙間からそっと覗くと関西弁を喋る唯一のあれが居た。それは、職員室にひとつある真っ赤なソファに大胆に座り込み、顔を真っ赤にしてぐったりしている。そして、酔っ払いみたいに何か喋っている様子のそれ。


「こんな美味しいもん先生達だけで飲むなんて、ず・る・い〜!!」

「……何やってんだよ、お前」


棗の声に反応したのか、ふにゃふにゃだったその目が大きく開かれた。そして、それはすぐに嬉しそうな笑みに変わって、ふらふら棗に近づいてきた。そして、思い切り……

がしっ


……抱きついた。

「!!?」
「棗や〜!なあにぃ?ウチに会いにきたん〜??」

思いもよらぬ出来事に棗は目を大きく見開いて唖然とした。明らかに蜜柑の様子が変だ。いつもは絶対にこんなことをしないのに。唯一する相手と言ったら、あの不思議少女、蛍という女子にだけだろう。

抱きつかれた手を離す前に、棗は鼻にくる甘い酒の匂いに気づいた。だが、それは蜜柑からなのか分からない。その理由は、部屋中自体が酒の匂いで充満しているからだ。

きっと、ナルたちが騒いでいたのだろう、職員室から部屋が近い棗は前から知っていたらしい。

いつもなら、ナルたちの勝手な騒ぎに首をつっこまない筈。だけど、今日こうやって職員室まで来た理由は、自分が少し気になっている"こいつ"が居るような気がしたから。そんな、恋愛じみた理由だった。

相変わらず、彼女は自分から離れずにふにゃふにゃ何か言っている。


「……お前、酒飲んだんじゃねぇだろうな」
「んん〜?飲んでへんよぉ〜??」
「嘘言え」
「嘘ちゃうも〜ん、ウチ嘘つかへんも〜ん」


飲んでなきゃ、なんなんだ、これは。変すぎる。

普通なら、蜜柑の匂いをかげば酒を飲んだか飲まなかったかくらい分かるものの、部屋の匂いが邪魔して分からない。そのイライラからか、蜜柑から顔をそらし、棗は疲れたような表情をして、ふぅと息をついたのも束の間。それはすぐに、はっとした顔に変化した。どうやら、何かひらめいたようだ。


「おい、酔っ払い。こっち向け」
「だから酔っ払いちゃうってゆ………ッ」

そう不満を言いながら、上を向いた顔は影につつまれて、唇を奪われた。吸い上げるようにしてするそれはどこからどう見てもただの濃厚な口付けとしか思えない。自然と混ざってくる甘い匂いが頭を変にさせた。それは数秒で終わって、ちゅっという音と熱い息と共に唇は離された。


「……………あま」

匂いで分からなきゃ、味で確かめればいい。
それが棗の悪戯っぽい考えだった。

すると。

「…なつめぇ」

いつものお怒りモードか、と思いながら彼女の顔を見てみれば、なんと嬉しそうに笑っているではないか。顔を真っ赤にして、とろんとこっちを見つめている。

見たこともない彼女の姿に棗は思わず言葉を失ってしまった。いつもは、自分が攻めモードだが、何だか今日は彼女が攻めモードになってしまいそうだ。嬉しいんだか、恥ずかしいんだがよく分からない感じが棗の頭を混乱させていた。

「キスしたいんやったらそう言えばええんにぃ〜〜」

思ったとおり、攻めてきた。目を瞑って唇を寄せてくる彼女。そのまま襲ってやろうか、と思ったが、やはり彼女が攻めというのが性に合わなくて、顔を避けて片手で彼女の顔を自分から離した。



「……それより。お前やっぱ飲んでたんじゃねーか」

先程、口付けたときに感じた甘味がまだ口の中に広がっていて気持ち悪い。

「だ〜か〜らぁ〜、飲んでないって言うとるやろぉ〜??」


まだ、そう言う蜜柑を棗は自分の体から一度離すと、机の上に大量に置いてある缶の中からひとつ蜜柑に見せるように持ってきた。蜜柑はその缶に気づくと、にへらと笑った。

「あ〜、そのジュースめっちゃ美味しかってん〜!」
「これ、焼酎だから」

自分は、小さい頃から遊び半分で酒を飲んできたことがあるからこれが何なのか分かるのだ。それは、嘗てよく自分も飲んだことがあるそれ。

「……しょ、しょうちゅう…?」

「そう、焼酎。アルコール入り」

ハテナマークを頭の上に浮かべた蜜柑に棗が詳しく付け足した。でも、すでに酔っ払った奴にそう言ってももう遅い。蜜柑のハイテンションぶりは治らない。

また、蜜柑は棗に勢いよく抱きついた。その拍子で蜜柑と棗は後ろにあった赤いソファーに倒れこむ。急なことに瞑っていた目をそっと開けると、目の前には蜜柑の顔。自分を下にして、蜜柑が上から倒れるように抱きついている。いつもなら、反対の立場の棗は、慣れないその光景に珍しく焦っていた。

呆然としていると、蜜柑がとろけるような甘い表情をして上から見下げるように顔を近づけてきた。


「…なぁ、なつめぇ。棗は、ウチんこと好きぃ?」


潤んだ瞳に、自分の頬に落ちてくる乱れた髪。とろんとした表情。少し肌蹴たパジャマ。
何もかもが色っぽく見えて、すごくドキドキする。

知ったことのない、彼女の色っぽさに理性を失いそうになる。


「ウチはねぇ〜…、棗のことだあ〜〜ぃすきっ」


その言葉がいけなかった、その言葉が。
とろけるようなその表情、その言葉が棗の理性に一気に火をつけた。

ギシッ…


きしむソファの音と同時に、棗と蜜柑の立場は大逆転。いつのまにか、蜜柑が下に押し付けられ、棗が上に圧し掛かる。どうやら、最後まで彼女が攻め、というのが気に入らなかったようだ。

「それ言ったこと、覚悟しろよ」

「……ん…っ……ッ」


暗闇の中で棗が何か言ったかと思うと、突然、強引なキスが降ってきた。甘い甘い酒の味が混ざった大人のキス。吸うように口付けられて、また離れる。離れたと思ったらまた襲ってくるその力強いキス。何度も角度を変えて、何度も降ってくる。

ギシ ギシッ

荒いソファの音をたてて、体が動く。汗ばんでいく体がうっとおしくなってソファの下に服を脱ぎ散らかす。彼女の肌蹴たパジャマのボタンを手にとって、外そうとするが、汗ですべって思うように外れない。その間に彼女の唇には優しい口付けを。彼女の首元には舌を吸わせて自分なりのキスマークをつける。彼女が放つ荒い息により興奮してしまって思うように進まない。


そんなとき、いきなり彼女が。


「ぎゃあああああーーーーーーー!!!!!!//////」


ばっちーーーーーーーーん!




「……………………」

狂ったように元に戻って棗に平手打ち。棗は、真っ赤に腫れ上がった頬に片手を添えながら、何が起こったか分からなく、呆然としていた。

蜜柑は、肌蹴たパジャマに震えながら手を添えてソファから落ちて、立てない状況だった。

何が起きたのか、さっぱり分からない。
棗と蜜柑も同じ気持ちだ。


バタバタバタ


「なんだーー!!?って蜜柑ちゃん!?と棗くん!!」

蜜柑の馬鹿でかい悲鳴に気づいたのか、ナルが先頭となった先生達が次々に部屋に入ってきた。

「……な、何やってるんだ!?」

と、神野先生。目の前には、肌蹴たパジャマを着て、おまけに震えている蜜柑と、上半身裸でソファの上に赤く腫れた頬をさすりながら座っている棗の姿。『何やってるんだ』それは、誰もが見てそう言うだろう。

それは、どう見ても"狼が嫌がる少女を襲った"というようなあれで…。



「……ち、痴漢や…!な、なな棗…が……ッ」
「……俺も……何が…なんだか……」


お互い、何がなんだかさっぱり分からない様子。混乱状態の先生達は、机の上に大量に飲み干してある焼酎に気づき、ようやく真相を理解した。










「…酔って、蜜柑ちゃんが大胆になって、そうなった…って訳、ね…?」

後日、蜜柑たちを職員室に呼び、ナル先生は二人にそう言った。でも、蜜柑と棗は何がなんだか理解できていない様子。だから、ナルもはっきりは理解出来なかった。


(……最近の小学生は進んでるなぁ…)

と思わず苦笑い。


「……あんた…ウチのこと襲って…何考えてるん…」
「はぁ!?お前が襲ってきたんだろ!」
「ウチがあ!?乙女がそんなことする訳ないやろ!変態!!」
「大体なぁ…っ、お前が俺のこと大好きなんて言うから…!!」
「ウチがいつそんなこと言うたん!?冗談もええ加減にしぃ!!」
「覚えてねぇだけだろ!!馬鹿すぎるのも好い加減にしろ!!」

ギャーギャー!

「ま、まあまあ……」



でも、なんでいきなり元に戻ったのだろう……。
もしかして、最初から技とだったのか、でも、彼女に限ってそんなことがある筈がない。

と、棗は理解できない疑問を考えていると、突然、職員室から誰かが入ってきた。

「失礼します」

「今井さん!?」
「蛍っっ!!」

不思議少女蛍さんは黙ってツカツカと職員室に入ってくると、ちゃっかり蜜柑と棗の間に入り込んだ。どうやら、何か真相を知っているらしい。

「前にも蜜柑が間違ってお酒を飲んだことがあって……」


話によると、蜜柑は一度酒を飲むと止まらなくなり、すぐ酔うらしいのだ。おまけに酒癖も悪く、色んな人にしつこく抱きついたりするらしい。そして、前は蛍自らが犠牲になったという。

そして……酔うのも早くて、覚めるのも早い……らしい。

「憎いもんですよね」

そう、蛍は付け足すと、職員室から出ていった。


さらりと言って、さらりと帰っていった解説に、三人はただ立ち尽くしていることしか出来なかった。





「………………ごめん、棗…lllll」



全ては僕を酔わせた彼女の誘惑だった。



END....

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す、すいません!!!終わり方訳わかんなくなりました!!!ちょっと微エロ目指してみたりして。あー!なんかすみませんとしかいえません!!すみません!!すみません!

ああ!!そうだよ!!寮と学校って別なんだ!!!