「12:好き、嫌い、でも好き」 |
棗は優しい。意地張ってても、ちゃんとウチのこと見ててくれる。ウチが危ないとき、ちゃんと守ってくれる。優しすぎて自分を犠牲にしてまうくらいな。
せやからそんな棗が気になってしまって、ついウチも守ってあげたくなってまうねん。沈んでる姿見ると、抱き締めたくなってまう時もあるん。これって”母性本能”って言うんやろうか?
でもそれだけやないんや。あの綺麗な赤い目も、さらさらの黒髪も、時々見せる笑った顔も、好きすぎてたまらん。大好きやねん!
でもでもでも、棗は嫌な奴。人の嫌がることしたり、人が傷つくこと言ったり。
それもウチばっかり。なんなん。ウチがあんたになんかしたか?そりゃあ、ウチだってあんたにキツイことばっかゆうてるとは思うけど、それは何時だってあんたが先にムカつくこと言うからや。馬鹿、ブス、ボケ、阿呆、ぎょーさんありすぎて数え切れんくらいや。ほんっま嫌な奴。嫌い嫌い!あんなやつ大嫌いや!
やのに、やのに…それでもやっぱ”好き”思うてしまうのはなんなんやろ。
ウチってば可笑しい。これじゃ矛盾しとるわ。好きなん嫌いなんどっちなん?
好きなん。胸がきゅうんってなるん。大好きって思ってしまうん。
「…っっっっ誰か病院連れてって!!!!」
END
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「蛍さんの前でそれ言ったら本気で病院連れてかれるからよした方がいいよ」
と、ちょっと言ってみる。