「10:離してなんかやらない」

彼が傷ついて帰ってくるとき、彼は芯から冷え切り、彼女と口を聞こうとはしない。黒い教師に何か言われたのだろう、彼女が話し掛けても彼は反応をせず、突き放すような態度、言葉を漏らす。彼女は、彼のその態度が自分を守る為に技とそうしてくれているのだと分かっていた。しかし、それは彼女にとって嬉しくも何ともなかった。その彼の優しさは、彼女から言わせれば何の優しさでもなく、彼女は寧ろそれを卑怯だと嘆いた。彼女を守る為に自分だけ犠牲になるなど卑怯だと。
彼女は闇に満ちていく彼を力一杯抱き締めて言う。涙を流しながら、強い口調で。その言葉は深く、それは黒い教師への挑戦状のようだ。
「…絶対っっ離してなんかやらん!」


END
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お題からしてラブラブなやつかな〜と思わせておきながらシリアスですから。
なんか棗の事情を知らないでこれを読んでると別れたいのに別れてくれない彼女みたいな話だな(笑)