「05:キスがしたい」

廊下を歩いていたら、急に誰かに手を引かれ、一瞬のうちに使われていない教室の中で少女は壁に押し付けられてしまった。壁で背中を打った衝撃で瞑っていた瞳をうっすら開くと、そこには天敵である少年がいた。
「…っな」
少年は少女を囲むように壁に両手をついている。表情は何時もと変わらず、何事もないような表情をしている。二人の顔の距離はそれ程なく、呼吸のしづらい状態だ。
「ちょおっ離してや」
「いやだ」
そう悪戯っぽく舌を出す少年の胸を押し、離れようとするが少年はびくともしない。寧ろ少女の細い腕を捕らえ、抵抗できないようにそれを壁に押し付けた。
少女の頬が段々と熱くなり、呼吸が荒くなっていくのが分かる。恋人同士という訳ではないが、伝えていないだけでお互い両思いなのだ。だからこの状態が嫌な訳ではないのだが、少女にとっては恥ずかしくて堪らなかった。
「何でこんなことするんよ」
「したいから」
「何をっ」
「決まってんだろ、性行為」
「っっ阿呆!!」
そう顔を真っ赤にして怒鳴る少女のおでこに、少年は優しくキスを落とした。それは段々と眉、頬、鼻筋へと落ち、最後には少女の赤い唇に辿り着き、優しく噛み付いた。舌を巻き込んだ深いキスの間に、少年は小さく先程の続きを呟いた。
「…嘘。キスがしたい」


END
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楽しいねお題。
飽きないように精々頑張ろう。
なつみかんの甘いのっていいね。