「03:積極的な日」 |
何事も積極的に、とよく祖父に言われていた。”恋人同士”に関しても、積極的にならなければいけないのものだろうか?
『棗君にちゃんと”好き”って言ってあげてるの?』
ふと蘇るのはホームルームで野之子ちゃんに言われたあの言葉。そういえば付き合ってからは勿論、付き合う前も彼に”好き”と言った事がなかった。あちらが告白してきて、自身は”うん”と言っただけだったし。
恋バナ好きの野之子ちゃんはこんなことも言っていた。”好きって言ってあげないと、そのうち愛想つかされちゃうよ”と。この言葉を思い出し、蜜柑はさらに焦った。
そうかもしれない。言葉が全てとは言わないが、好きと一度も言ってもらえないのはやっぱり自分とて不安になるかもしれない。”好き”という気持ちをお互い理解してこそ安心できるというものではないだろうか。考えに考え、蜜柑は決心した。恥ずかしいながらも”好き”と彼に言おうと。
普通に帰り道に言えば良いものの、大袈裟に放課後の図書室へと彼を呼び出し、蜜柑は彼が来るのを待った。緊張で手が震えている。心臓の音も煩くなってきた。
暫く待つと、彼がやってきた。
「何だよ、用って」
淡々と言う彼に、蜜柑は”好き”という為に大きく息を吸い込んだ。たった二文字を言えば良いのだ。それを言えば全て丸く収まる。彼だって分かってくれるだろう。蜜柑は精一杯の思いを込めて、今、叫んだ。
「…っキス!!!」
END
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ある意味一番積極的な言い方なオチで終わりです。
そのあとのラブラブな二人はご想像にお任せします。