「02:聞かないふり」

ウチん中での最初の棗のイメージは”めっちゃ嫌な奴”。パンツ脱がすし、髪燃やすし、ウチはか弱い女の子やのに手加減なしや。
…けど、今のウチん中での棗のイメージは”気になる奴”。前のこと考えるとムカつくけどな。でも気になるん。不意に見せる寂しそうな横顔とか、守ってくれる時のあの力強い赤い瞳だとか。全てに釘付けになってしまうんや。これは”恋”っていうんやろうか?
そんな棗が最近少し変。何時もみたいに憎まれ口叩いた後に、技とらしく”あれ”を付け足す。
「あんたなんか嫌いじゃボケ!!」
「俺もお前みたいなアホ、嫌いだから」
その後に言う。棗は、
『…多分。』と。
”嫌いだから…多分。”ってことは好きってこと?ウチそこまで鈍感やあらへんもん。そのくらい分かる。でもそれを分かってしまうのは、ウチがあんたのこと意識してるからやろうな。
けどウチは棗の『多分』に反応なんてしてやらん。あっちは気づいてほしくて技とああしてるみたいやけど。
だってウチまだ忘れてないねん。
『お前、全部キライ』
あんたが前にウチに言った言葉、忘れてへんから。
あんたが一人で何もかも背負い込もうとしたこと、忘れへんから。
覚えとき。ウチは根に持つタイプなんやで?
だから意地悪してやんねん。答えてなんかやらん。仕返ししてやるん。
だからウチはまだまだ、聞かないふり。


END
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蜜柑の棗に対しての可愛らしい気持ちを目指してみました…。
お題楽しいね!